K'sDiary
“三冊目” --
本編
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外伝
“三冊目”
〜1〜 「ちょっと聞いてよっ、キャス!」 なにやら憤慨した様子の親友を見やり、 「あら、こんにちは。どうしたの?」 キャスは赤ポを数える手を止めた。 「今日寄ったデパートでね」 「うん」 「化粧品の店舗が二階に入ってたの!」 「・・・それが?」 シルが何を興奮しているのか掴めずに、キャスが首を傾げる。 「それが!? キャス、あなた今“それが?”って言った!?」 信じられない! そう言わんばかりの様子でシルが叫ぶ。 「そこは一階しか出入り口が無いのよ?」 「うん」 「・・・あぁ、もう!」 我慢できなくなったシルは不平を説明し始めた。 「匂いがこもるし、混ざっちゃうじゃない!」 「まぁ、そうね・・・言われてみれば、それはそうかも」 香水自体は良い香りでも、混ざり合ってしまうと何とも異様な匂いになってしまうのはよくあることだ。 クーラーの無い、夏場の教室の女子群を思い出してもらえばいいだろう。 「なにより、華やかな人寄せの効果があるべきなのよ」 大手デパートなどでは、吹き抜けの一階フロアに化粧品店舗が入っていることが多い。 ポスターにしろ、ラインナップにしろ、化粧品は華やかに人目を惹きつける。 「つまり、女の魅力の活かし方を知らないってことじゃない!」 「そんな大げさな」 キャスは苦笑する。 「いいえっ、そんな店の化粧品なんて信用できない!!」 憤慨しながら断言する友人を見て、キャスは思った。 モデルをやっていると、ファッション関係に妙なこだわりが出来るものなのだろうか? 自分が持っている香水の種類は言わないでおこう。 その値段も。 一方、6サバのデビアス小屋で。 銀髪の秀才ウィザード熊野御道・祭囃子、通称マヤは隣にいる友人に語り始めた。 「ケイ。MUの公式説明によると、カルリマのことをこう説明している・・・」 クンドンによって廃墟となった水中神殿。 カルリマ内部には、クンドンの部下であるモンスターが集まり、カルリマのあちこちに隠された守護の宝石を捜すため徘徊している。 連合国はクンドンの勢力を沮止するために、カルリマを攻撃することに決めた。 しかし、カルリマはミュー大陸の4次元空間でのみ存在しているため、 カルリマの師弟たちが作った「忘れられた地図」を使ってカルリマへのゲートを開かなくてはいけない。 「忘れられた地図」は壊れて散らばってしまったが、カルリマへの鍵「クンドンの印」を集めて復元することが出来た。 果たしてクンドンの野望を打ち砕くことは出来るのだろうか・・・ 「うん、そうだね」 接近戦特化エルフの慧・天衛、通称ケイは頷いた。 目の前の友人ほど詳しくはないが、-夢中-で見た記憶がある。 生命の宝石に続くエトラムの欠片、守護の宝石を求めて彷徨うカルリマの魔物たち。 「だが」 自他共に認める変人だが、元はロレンシア魔術学院の主席であったマヤが疑問点を重々しく告げた。 「・・・カルリマで守護の宝石はドロップしない」 〜2〜 「旦那もMUしてるの?」 シルは驚いて言った。 そんな親友に肩をすくめて 「そ。でもPTはしてないけど」 「なんで!」 「シル・・・あんた今、“許されざる者を見る目”になってる。有栖川有栖の、火村助教授が犯罪者を見るときみたいな目」 「からかわないで。わたしじゃなくても不思議に思うわよ」 「別に大したことじゃないでしょ」 「大したことよ!」 シルは、自分の夫がMUしていれば固定PTするだろう。 そりゃあ時にはバラで狩りしたい日もあるだろうけれど・・・そう、週に三日か四日くらいは。 「だって、しょうがないじゃない。ほら、あたしバラエルだし」 「関係ないわよ! なに、あなたの旦那ってそんな理由でペア狩りPTしないわけっ?」 再び火村助教授の目に戻るシル。 「そうじゃないわよ」 キャスは苦笑する。 「別にそんなこと言わないけど・・・やっぱほら、効率悪いじゃない? それにあっちはIN時間も限られてるし」 レベル差が開くと、それはそれで何だか家事をしてないみたいに思われそうだ。 「わたしならサブ作る」 親友があっさりと解決策を即答する。 「それは気づかなかったわね」 笑う。 「誘えばいいじゃない」 シルが言う。 どう答えたものか。 シルは迷った。 実のところ。最初の頃、彼をペア狩りに誘ったことはある。 で、何度かは上手くいっていたと思う。 けれど、そのうちギクシャクするようになった。 EEじゃないからと。 そう口に出してはっきり言ったわけではないが、不満というのは伝わるものなのだ。 PTしなくなった当初はキャスも傷ついていたのは確かだ。 だが、それだって今はもう自分の中で整理をつけた。 誰だって、限られた時間でなら不満な時間を過ごしたくはない。 それに・・・たかがゲームだ。 別に一緒にいないといけないものでもない。 あっちはあっちで、どこかで誰かとPTしていることだろう。 こちらと同じように。 「いいのよ、シル」 「でも」 「ん、ありがと」 そう言って笑いかける。 その笑顔を前にしては親友も黙り込むしかない。 シルは少し考えた後、 「じゃ、今から狩りに行こ。気分転換」 にやりと笑って、愛用の武器をちらりと見せる。 EXダイダロス+13. 別名、プレデター・サーティーン。 「いいわよ、どこ行く?」 「実はさ、さっきPTの誘いが来てたのよ。6サバ、どう?」 「6?」 少し戸惑ったようなキャスの返事。 「キャス、あなたサバ固定でしょ。せっかくのMMOだもん、他のサバにも行かなきゃ勿体わよ」 「んー、でも・・・」 「オポッサムだってシャムだって、あなたのギルメンみんな他サバで野良とかしてるんでしょ?」 オポッサムは二次羽ウィザードで、口は悪いが優しいやつだ。 野良好きで、ギルドサバにいることのほうが少ない。 シャムも同じ“ワラビー”ギルメンのエナ寄りバラエル。 こちらはリアルの財布に余裕があるのだろう、ガチャ等で装備や石には困ってない。 その余裕か、見た目もきらびやかで、愛嬌を振りまいてペア狩りなんかを楽しんでいるらしい。 今日も二人ともギルドサバ以外で狩りをしてに行っているはずだ。 「キャス、その引き篭もり根性を叩き直してあげる」 言葉ではそう言いながらも。 PTの予定があったのに、今は自分を一人にしたくないのだと思っている親友の心がキャスには分かる。 息を吐いて、 「そうね。それもいいかも」 「でしょ? 実際に試してみなきゃ良さは分かんないものよ」 「アレみたいに?」 それを聞いた親友はにやりと笑って、キャスの肩を叩きながら 「言うでしょ? 結婚するまでは真の幸福は分からないものだ」 そして、口を揃えて言った。 「「そして、分かったときにはもう遅い」」 一方、6サバのデビアス小屋で。 ロレンシア魔術学院きっての秀才であり、問題児であったマヤは隣にいる友人に語り始めた。 「ケイ。MUの公式説明によると、ブラッドキャッスルのことをこう説明している・・・」 ミュー大陸の戦士たちの激しい抵抗にあったクンドンは、「闇の虐殺者」とも呼ばれる親衛隊を 呼び寄せる計画を立てた。 クンドンの動きを察知した天上界は最も勇猛な大天使と12人の聖者を向かわせ、 親衛隊の本拠地「ブラッドキャッスル」を聖なる力で封印しようとする。 その過程で聖者たちは全滅し、辛うじて生き残った大天使は自らの身で結界の入り口をふさいだ。 だが、繰り返される親衛隊の攻撃によって大天使の力は弱まり、結界が破られるのは 時間の問題だ。 弱った大天使の力を取り戻すには、ブラッドキャッスル内に隠された彼の究極の武器が必要である。 彼はミュー大陸の戦士たちに最後の希望を託すことにした・・・ 「うん、そうだね。・・・何度も武器を取られてるけど」 少し言いづらそうにツッコミを入れてみるケイ。 彼女も成長したようだ。 「うむ。まさにそこだ、ケイ。二時間に一回ペースで武器を奪われる大天使、彼には学習能力が無い」 「・・・ま、まぁそういう言い方も出来る、かな」 「あるいは、単純かつ圧倒的に能力不足かだ」 はっきりと言う銀髪の秀才。 「思うに」 物知りだが、恐れを知らぬマヤが新案を重々しく告げた。 「彼に大天使の武器を返さないほうが正解なのではないだろうか?」 〜3〜 「どう? 悪くなかったでしょ?」 まだ興奮がさめやらないのか、息を弾ませたままでシルが聞いた。 「そうね。あんたの言う通り、こういうのも良いかも」 たまにはね。 キャスも久しぶりのギルド外PTを満喫し、心地よい疲労感を感じながら答えた。 メンバーの人柄が良かったことも大きかったと思う。 統率特化のDLがかけたC+でシルは思う存分“プレデター・サーティーン”を満喫したし、頭一つ抜けた高レベルの回避エナ魔の火力が凄かった。 実際、成長したバンケル装備のバラエナ魔の火力は侮れないものがある。 エナエルの援護を受け、Gの恩恵に驚いたりもした。 それに、キャスの乱れ撃ちでもたたき出されるダメといったら・・・A恐るべし。 ドロップもなかなか良かった。 大満足のうちにPTを解散し、デビアスの倉庫に向かう足も心なしか軽い。 と、キャスの足が止まった。 ついてこない親友に気づき、怪訝そうにシルが振り返る。 「キャス?」 だが、キャスの目は見開かれ、声に反応は無かった。 シルは視線の先を追い、 「?」 (・・・キャスのギルメンのエルフ?) 確信は無かったが、ペア狩りだろうエルフとナイトの二人に目をとめる。 「! ・・・キャス!」 直感は遅かった。 シルが伸ばした指先が届く前に、キャスの姿はこの世界から消えていた。 唐突にサバ落ち・・・いや、EXITした親友の姿をFLで探したが、その表示はログアウトを告げていた。 シルは彼女らしくもなく毒づき、先ほどの二人連れのほうに早足で近づいた。 エルフは“ワラビー”ギルメンのシャム。 シルに気づかないまま、彼女と楽しそうに話すナイトに声をかけた。 質問でなく、確認の口調で。 「ちょっと。・・・あなた、キャスの旦那ね」 一方、6サバのデビアス小屋で。 ロレンシア魔術学院きっての秀才であり、問題児であったマヤは隣にいる友人に語り始めた。 「ケイ。MUの公式説明によると、カオスキャッスルのことをこう説明している・・・」 カオスキャッスルは、大魔王クンドンがブラッドキャッスルで戦死した大天使の近衛兵の死体を利用して、 ミュー大陸に混乱を起こそうと悪霊復活の儀式を行うところです。 クンドンによって復活させられた大天使の近衛兵の死体が、カオスキャッスルの外に出てしまった場合、 ミュー大陸は混乱に陥るしかなくなってしまうのです。 カオスキャッスルに潜入してクンドンの企みを阻止するしか方法はありません。 「うん、そうだね」 恐る恐る返事をするケイ。 世に言う力エルフ、正確には接近戦特化エルフな彼女だが、その性格は草食動物のように気弱だったりする。 礼儀正しく丁寧だが、腰が低く、苦労性という業を背負って生まれたエルフ。 不幸の星の下との区別はひどく微妙だ。 「しかし、落ち着いて考え直してみるに」 常に探究心を忘れないマヤは、小屋の外の会話を盗み聞きしながら重々しく告げた。 「今さら、モンスターの種類にゾンビが加わる程度のことではないだろうか?」 既に混乱状態、世界は魔物にあふれている。 「ダンジョンのゴースト氏も喜ぶだろう」 仲間が増えて。 〜4〜 なぜ、自分はあれほど動揺したのだろう。 分かってる。 嘘っぱちだったからだ。 自分の中で整理をつけたなんて、嘘だった。 ・・・違う。 ただ、そう思っていただけ。 でも、それは間違いだった。 ギルドサバに戻ったキャスは机に突っ伏した。 彼女の横を、何も知らない冒険者たちが通り過ぎていく。 それで、いい。 平気だと思っていた。 彼の横で自分以外のエルフが寄り添っていても、そんなことは大したことじゃないと。 だって、そうではないか。 たかがゲームだ。 狩りする相手を選んだ、ただそれだけのこと。 けれど・・・予想外だった。 相手が顔見知りだったからじゃない。 ただキャスは、もし彼が他に相手を選ぶならエナエルだと思っていた。 AもGも高性能なエナの値の高い、かわいい装備で女性らしさを持った。 そう、自分には無いものを持ったエルフだと。 なのに。 同じバラエルだったなんて・・・そんなの、ひどい。 「キャス」 目を上げると、いつの間にかすぐそばにシルの顔があった。 この親友の心配そうな目は、自分の胸の内まで見通されているような気にさせられる。 「ねぇ」 「ん?」 「なんで・・・なんで、彼女なの?」 「キャス・・・」 「あたしとどこが違う? 同じバラエルじゃない」 ただ金をかけた装備と、少しばかり高いエナと、誰にだって振りまく愛嬌以外。 「あなたと彼女は違うわ・・・キャス、あなたじゃなきゃ友達になってない。あの女だったらとっくにぶん殴ってる」 人はそれぞれ違う。 それは分かってる。 でも・・・そんなことじゃ、ない。 「キャス。ちょっといいかな?」 声をかけられるまで、シルもキャスも彼に気づかなかった。 いつの間にか傍に立っていた一人のナイト。 柳眉を逆立て、キャスとナイトの間に立ち塞がるようにシルが詰め寄る。 「ついてこないで、そう言ったはずよ」 殺気だった目で睨みつける。 この彼女の視線に怯まなかった人間は今まで一人としていない。 そして、多分これからも。 「き、きみには関係ないだろう? 僕と彼女の問題だ」 及び腰になりながらも、抵抗を試みるナイト。 「いいわ、座って」 「ダメよ」 キャスの声を即座に遮ってシルが断言する。 その目は明確に告げている。 あなたにここに座る資格はないわ。 この場所に一刻でもいる資格も。 「シル・・・いいの」 不満そうに振り返るシル。 「キャス」 親友の覗き込み、 「キャス、あなた本当にいいのね?」 頷くのを確認し、ただなおも殺気だった視線を浴びせながらナイトに道を譲る。 「二人にして」 親友と目を合わせ、キャスが言った。 何かあったらすぐに呼びなさい、そう視線で告げ、離れるシル。 その先で、別の茸テーブルについた顔見知りの二人を見つけた。 銀髪の女ウィザードのほうが、いつもの無表情のままで手招きをしている。 そして、手に持ったグラスを揺らして言った。 「イランカイダ産のお茶でもどうだろうか? リラックス効果があるらしい逸品だ」 「なぁ、怒るようなことじゃないだろう?」 宥めるように男が言う。 「ええ、そうね」 あたしもそう思う。 心の中で呟くキャス。 「誰とPTしようと自由よね」 「だろ!?」 ため息をついて、 「じゃあ、なんでそんなに怒ってるんだ?」 「怒ってない」 「怒ってる」 きっとした目と視線が合う前に「泣いてたじゃないか」と言い訳のように続けた。 「・・・」 沈黙。 「彼女とはいつも?」 「ん、あぁ・・・まぁ。でも別に悪いことじゃないだろ?」 返事はしなかった。 「彼女、あたしたちのことは知ってた?」 「リアルで僕たちが夫婦だってことなら。隠すことじゃないだろ?」 「・・・そうね」 知ってたの。 無感動に心の中で呟く。 キャスは彼女ともよく話をしていた。 彼女が他サバへ行くのを見送ったりもした。 何度も。 でも全然知らなかった。 相手が・・・なんて。 けれど、彼女は知っていたのだ。 どんな気持ちで笑っていたのだろう。 あのときの、キャスに向けられた笑顔は。 「・・・」 「・・・」 再び黙り込む二人。 「ねぇ」 長い沈黙を破ったのはキャスのほうだった。 「うん?」 「自分で慰めることある? 性的な意味で」 「・・・は? な、なんだって?」 「あたしはするわ」 目を合わせたまま、静かに告げる。 「あなたが別の誰かとしてるとこを想像して、すごく感じて、すごく哀しい」 〜5〜 後日談になるが。 結局、シャムは自分からギルドを抜けた。 シャムは泣いて謝ったが、キャスは彼女が悪いとは思わなかったし、彼女を許す気もなかった。 彼女が抜けなかったら、キャスのほうが抜けただろうと思う。 そういうもので、それだけのこと。 それは彼女もお互いに同じだったろう。 一方、彼とキャスのペア狩りは・・・想像にお任せしよう。 ただ、理性、感情・・・ココロとカラダ。 そういったものは全部バラバラで、別個のモノで、はっきりキッパリ独立してて・・・そして、どうしようもなく繋がっているのだと。 そう思う。 「な? な? 今、何を見たと思う?」 勢い込んで聞いてきたのはジョーイ。 だが、彼のあまり上等でないおつむをよく知ってるキャスとシルは苦笑しながら 「なに、どうしたのよ?」 そんな二人に向かって、信じられないものを見たと言わんばかりにジョーイが叫ぶ。 「力エルフを見た!!」 正確には接近戦特化エルフだったが。 キャスとシルは顔を見合わせ、 「それが?」 「それが!? 信じられないよっ、だって・・・エルフなのに剣持ってるんだぜ?」 「ジョーイ・・・MUはMMOよ? 好きな装備をして、何が悪いの」 冗談だろ? まったく理解できないといった様子で、 「エルフって・・・女だぜっ?」 その瞬間、シルの眉がぴくりと反応する。 「俺だって女性差別する気はないけどさ、でも・・・クリス持って、AGHかけて、かわいくしてればいいじゃん! 男みたいに剣持つ必要ないだろ?」 かわいくない。 もしケイがこの場にいたら、また落ち込むようなことを言ってのける。 「あきれた。ジョーイ、それって女性差別そのものじゃない」 言葉通り、呆れきった様子でキャス。 「そう言うなよ、俺は女性を尊敬してる。だって、いつでも下を向いたらおっぱいがあるんだぜ? 俺なら仕事も手につかないよ」 冗談を言って場を和まそうとしたが・・・失敗。 キャスの横から、そんないつもの冗談を無視して、凛々しい女騎士が無理に落ち着いた声で口を開いた。 「つまり、こう言いたいのかしら。“その女は男の真似をしてる”って」 その声音を聴いた瞬間、キャスは思った。 まずい兆候だ。 たとえるなら、ディナーの途中でナイフとフォークがピタッと止まった感じ。 だが、疑問いっぱいらしいジョーイは全く気づいた様子も無く、しばらく考え込んだ後、肩をすくめて 「違うとでも?」 一瞬で跳ね上がるシルの柳眉。 たとえるなら、ディナーで楽しい会話が終わった瞬間。 慌ててキャスが口を挟む。 「ねぇ、ジョーイ。聞いてもいいかしら? “男の真似をする女”ってどう見える?」 何か言いたげに口を開こうとするシルを静止しながら、キャス。 「正直に言ってかい? まるで大馬鹿に見えるね」 そう答えたジョーイに、キャスはにっこりと笑って言った。 「あら。それじゃ“真似は成功”ね」 一瞬の後に吹き出した親友と手を打ち合わせ、男のほうを振り向き、二人で指差して笑いながら口を揃えて 「「その間抜け面っ!!」」
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