K'sDiary
“二冊目” --
本編
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外伝
“二冊目”
〜外伝〜 「シル。運って信じる?」 釜入れから帰ったキャスが悲壮な顔で親友に尋ねた。 「もちろん」 「・・・うそつき。あんたの自作じゃないくせに」 即答するシルに恨みがましい声で抗議する。 彼女の使っているEXダイダロスは+13を落札したものだ。 「うそつき? キャス、それわたしに言ってるんじゃないでしょうね?」 シルが眉を寄せる。 「いいもん、分かってるもん」 「なにが」 「あんたは自作なんてしない。自分は完成品を買って、あたしが燃やしてる見て腹の底で笑ってるんだ」 +11リベンジで二個目が燃えたキャスはとことん暗い。 「キャス」 「なによ」 「いけ好かない女を想像して。頭空っぽで、わがままで、そんで外見は美人」 「○○○○(※自主規制します 筆者注)みたいな?」 「素敵。完璧だわ・・・で、その女がとびきりイイ男をつかまえたとする」 「イケメン?」 「そ。グッドルッキングガイで性格も財布も文句なし」 「想像した」 「じゃ聞くわよ? もし運なんてもんがなかったら。そういうとき、その女の成功をどう評価する気?」 「で、何燃やしたの?」 お気に入りのプレデター・サーティーンの砲身を磨きながら、シル。 「・・・虎の子の鎧」 地獄の底からうめくようにキャスが答える。 「うそ! わたしに借金までして買ったアレ?」 「いけるような気がしたのよ。それに・・・果実合成も調子良かったし」 「キャス。忘れてなきゃいいんだけど・・・」 「うん?」 「あなた、あのときの借金まだ返してない」 「あぁ、もうっ!!」 キャスが頭を抱える。 「慰めようとか思わないわけっ? 親友が落ち込んでるのに!!」 「この楽しみは利子と思ってちょうだい」 にやにやしながら、シルがあっさりと言う。 「サド!」 「お褒めに預かり恐悦至極」 これ見よがしに鼻歌まで歌いながら、親友はどこ吹く風といった様子。 「あ」 と、シルが呟いた。 「どしたの?」 「釜入れ、待ったほうが良かったんじゃない?」 「あたしも今はそう思ってる」 燃えたもんね。 「そうじゃなくて」シルは苦笑しながら、 「ほら、噂の課金アイテム。釜入れの成功率上げるのもあるんじゃないかしら?」 「うそ!」 あんまりだ。 「まだ発表されてないけどさ・・・多分あると思うわよ?」 「なによ、それ! それじゃ今まで燃やしたのが馬鹿みたいじゃない」 キャスが憤慨する。 「これまではともかく・・・さっき、ってのは痛いかもね」 「そんなぁ」 あんまりだ。 まだ借金も返しきってないのに。 ちなみに、返すと明言しないのはキャスに言わせれば責任感がゆえである。 返すあても無いのに、返すなんて無責任なことがどうして言えるだろう? 「落ち込んでるのはあなただけじゃないけどね」 「ん?」 「猫さんもヘコんでた」 「・・・化け猫さん?」 心当たりの回避ナイトの名を挙げてみる。 「そそ。ほら、あの人ってEX薙刀+13作ろうとしてるじゃない」 「あぁ・・・もう五本くらい燃やしてるんだっけ?」 一言で言えば、愚挙。 「六本目を燃やしたばかりだって」 「わぉ」 上には上・・・いや、下には下がいるものだ。 「そりゃヘコむわね。お気の毒に」 良い人なのに。 とキャスの心を読んだかのように 「知ってる? あの人、実はエロいらしいよ」 「うそ!」 「信長の野望ってゲームでさ、性獣エロ猫って登録名にしたとか」 「ド変態じゃん!」 紳士だと思ってたのに。 「男なんてそんなものよ」 シルは丹念に磨き上げたダイダロスを仕舞いこみながら言った。 「首から上は紳士に振舞えるの」 「釜入れか・・・俺ならこれを着けてから挑戦するね」 ジョーイは取引窓でアクセを二つ見せた。 EX魔法のリング+4ゼン増加。 公式イベントで配られた役に立たないレア物だ。 「これ着けてるとさ、運が良くなるらしいぜ?」 「ジョーイって、そういうの信じるほうなんだ?」 だが、ジョーイは「まさか!」といわんばかりの表情で首を振った。 「いいや信じてない」 肩をすくめながら、 「でもこれってさ、信じてても信じてなくても幸運を呼ぶって聞いたから」 「・・・それって、信じてるって言うんじゃない?」
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