短編小説っぽいもの
応募内容 --
本編
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応募内容
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後書きコメント
『実際に送った応募内容』
・ゲームID 【*******】 ・ペンネーム(解答が公開される場合に使用します) 【******】 ・犯人だと思う容疑者 【グリードル】 ・犯人の動機 【命を助けようとして】 ・あるならトリック 【以下:真相・・・というか、推理の流れ ※使用したポイントとなる公式記述の手がかりは「」で記載。 まず、容疑者A:ストーン ゴーレムと容疑者B:ファイアー ゴーレムであるが、この二人は分かっている犯人の根拠があまりに薄い。 動機の可能性、“ケンカしたかもしれないからアイツ怪しい”レベルである。 ゆえに除外したい。 容疑が濃いといえばダントツの容疑者D:ミシャグジーだが。 怪しい要素てんこもりだが、よく考えればどれも状況証拠レベルである。 アリバイが証明できない日常だっただけかもしれず、他から入手した玉鋼で虎徹を作ったかもしれない。 目撃証言だって、近くを通りがかっただけかもしれない。 親友なら頻繁に訪ねることもあろうし、そのときに鱗が落ちても不思議は無い。 遊びに行った友達の家に抜け毛を落としたというだけだ。 さらに被害者と親友であるにも関わらずのこの怪しさは、おそらく紹介写真のウソ泣きが最大原因だ。 うん、そんな気がします。 現時点で最も容疑が濃いのは容疑者D:ミシャグジーであるが、それ以上に容疑が濃い要素を持つのはいないだろうか? いる。 容疑者C:グリードルである。 被害者に噛まれた痕があり、それで容疑者入りしたくらいであるから、歯型がかなり一致したことは間違いあるまい。 “噛み跡が理由で無理な容疑者を出してみました”ように見えるグリードルだが、よく考えれば最大容疑者だ。 死因と思われる傷と一致する凶器を持ったやつがいれば、犯人に決まっているではないか。 ましてや、この場合は凶器が本人と不可分であり、明らかに本人以外使えない凶器である。 にも関わらず、なにゆえに“無理な容疑者”に思われるのか? 理由はただ一つ、「水から出られないんですけど」。 違うのだ。 思考の順番が逆だ。 水から出られないグリードルだから犯人ではないというのは、ただ一つの勝手な前提条件に起因する。 すなわち、“犯行が行われたのは地上である”という思い込み。 公式のどこにもそんな記述は無い。 では、犯行時、被害者のガイアが水中にいたというシチュエーションはいかに構成されたのだろうか? 地下水路で水中に落ちる(入る)といえば、中央に走る大水路であろう。 そこの上にかかった、左右をつなぐ石橋。 その石橋に壊れたものがあるのはご周知の通りかと思う。 石橋のメンテは、POP地点から用務員ストーンゴーレムの担当と見てよい。 だが、容疑者A:ストーン ゴーレムは言っている。 「事件があった日、俺は非番だったぜ」(保障する証人まであるアリバイ) 担当の彼は休みだった。 だが、壊れた橋というのは危ない。 「優しい性格」の「筆頭用務員」であるガイアは心配した。 直そうとしたか、見回りか、壊れた橋を巡回した。 が、彼はきっと大きすぎた。 重すぎた。 不注意からか、崩れたか、彼は壊れた石橋から水路の水中に落下してしまったのである。 さて、水中にいたのは容疑者C:グリードルだ。 上から落ちてきた「多くの生徒に慕われていた」ガイア、なんということだ。 グリードルは、彼のコメントからも善良そうな人柄が伺える。 そんな彼は当然の行動を取ろうとした。 すなわち、水中に誤って落ちてしまった犠牲者を救助しようとしたのである。 溺れる人を助けようとするとき、我々は手を使う。 だが、グリードルには手が無い。 彼にあるのは牙だけである。 引っ張り上げるため、彼はガイアを噛んだ。 救助しようとするとき、力加減などしない。 誰でも、力いっぱい思いっきり引っ張り上げるものだ。 ましてや小柄なグリードルが、巨大なガイアを引っ張り上げようとするのである。 彼は力いっぱい噛んだ。 渾身の力で噛んだ。 助けたくて。 公式にガイアが事切れていた場所の記載はない。 が、私は水路からガイア部屋への途中であったのではないかと思う。 ガイアはグリードルによって地上へと帰ることが出来た。 「優しい性格」の彼は、自分の命を助けようとしてくれたグリードルに “お前、俺を噛み殺す気か!” とは言えなかった。 むしろ、善意の救助者に感謝の言葉を口にしたことだろう。 だから・・・グリードルは自分が殺人者であることを知らない。 そして、被害者はガイア部屋へと向かう。 保険の先生であるゴーレム ハイプリーストのところへ、ヒールオールの治療を受けるために。 だが、彼の傷は深すぎた。 ひとに優しくなれなければ生きるに値しないという。 だが、タフでなければ生きていけないのだ・・・ガイアは生きるに値する人物だったが、生き残るにはタフさが足りなかった。 ダイイングメッセージは「たすてけ」である。 考えてみて欲しい。 誰かに殺されたならば、ダイイングメッセージに残すのは犯人の名前であろう。 死に瀕しているとき、自分が死んだ後に残すメッセージとして助命の言葉という選択肢はおかしい。 少なくとも、犯人がいる殺人事件では。 だが、今回の場合はどうだろうか? 自分の傷が致命傷であることを悟ったガイア。 だが、「優しい性格」の彼は救助者を“自分を殺した犯人だ”とは言えなかった。 溺れる自分を水中から助けてくれたのだ。 けれど、死にたくはなかった。 彼の最期の思いは恨みではなく、助かりたいという一念のみであったに違いない。 「たすてけ」という日本語としておかしな言葉からも、自分を“助けた者”と“殺した者”が同じであるというジレンマに葛藤し、混乱している様が窺えよう。 この事件のどこにも悪意は無い。 殺意も無い。 あるのはただ、善意だけである。 被害者ガイアは“危ない場所の見回りという善意から”死地に向かい、殺人者グリードルは“溺れるものを救助しようという善意から”噛んだ。 だが、ガイアは壊れた橋には重すぎ、グリードルに助ける腕は無かった。 石橋付近の担当である用務員ストーンゴーレムが非番であったことにも悪意はない。 殺意も無い。 私はこの事件を“優しい殺人事件”と名づけ、ファイルしておこうと思う。 そして、近いうちに容疑者B:ファイアー ゴーレムを尋ねたい。 彼はきっと、この顛末から名曲を作り出すだろう。 音楽性を語り合うほどだったという友人に捧げる、それがなによりの供養になることを私は願う。】