短編小説っぽいもの
題材“復帰” --
本編
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外伝
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後書きコメント
『題材“復帰”』
〜外伝〜 「おや」 片方の眉を上げてみせる銀髪のウィザード。 それは、彼女にとっては最高の驚きの表現なのかもしれなかったが。 「マヤ、久しぶりね」 マヤと呼ばれた娘は腕時計を見るかのような仕草をして、 「うむ、41日と15時間28分40秒ぶりといったところだろうか」 「・・・それって、あたしのことをいつも忘れないでいてくれたって意味に取るべきなのかしら」 「解釈はそれぞれの心の問題だ、マージ。きみの好きにしてくれたまえ」 「・・・ありがと」 「どういたしまして」 そして、ポンと手の平を打った後、 「今、少し時間はあるだろうか?」 「ええ、大丈夫だけど?」 少し待っていてくれたまえ。 そう言い残し、悪名高い銀髪の秀才娘は倉庫に向かった。 なにやらバズと話した後、大きな荷物を持ってやってくる。 「あぶない! ・・・だ、大丈夫?」 足元がふらふらしている。 というか、大きくよろけてDSの看板をしているらしい強面のナイトの顔面に荷物をヒットさせた。 どうやら腕力は無いようだ。 ナイトが怒り出したらと心配したが、どうやらAFKらしい。 (良かった・・・) ふと思う。 看板役はEEが多いものだが、それを思うと・・・この強面のナイト、見かけによらず心配りの出来る人間なのかもしれない。 それはそうと。 「マージ、受け取ってくれたまえ」 どさっと足元に置く。 「きみの復帰祝いだ」 「え」 「きみが休んでいる間にMUでは大規模なアップデートがあったのだ」 「あぁ」 そういえば。 「人呼んで、“クンドンの逆襲”」 なにやら不思議なポーズをつけて言う銀髪娘。 「ちなみに、シーズン3は“ウェブゼンの帰還”だとわたしは睨んでいる」 「は、はぁ」 相手の反応を見て、手応えを感じなかったらしく 「ふむ。きみはダースベイダーのテーマを聞いたことはあるだろうか?」 「あ、えっと・・・スターウォーズの?」 「うむ。名曲だ。良かったらメールに添付して送っておこう」 「・・・うん、ありがとう」 あまり嬉しくは無いが。 「おぉ、そうだ。忘れるところだった」 足元の包みをゴソゴソとしだす銀髪娘。 「それって・・・ひょっとして、新装備?」 「うむ。アイリスという」 「へぇ、緑なのね」 「ちなみに、この包みに使った風呂敷は今から300年ほど前のロレンシア産だ」 「・・・」 「時価70万ゼンは下らないだろう」 参考までにこの世界のメール郵便料は1000ゼンだ。 ・・・高いのか安いのか微妙な気もする。 「マージ。確かきみはクローンがいたと記憶しているが」 「・・・サブのことかしら?」 「うむ。マジェスティック・ワンからイレブンまではクローンなのだろう?」 この銀髪娘の名は熊野御道・祭囃子、通称マヤ。 ロレンシア魔術学院を主席で卒業した悪名高い秀才で、スターウォーズ・シリーズではエピソードU“クローンの逆襲”がお気に入り。 帝国軍のクローン軍団にロマンを感じるイヤな美少女である。 「・・・まぁ、たしかに全部エルフだけどね」 ちなみにマージの趣味はMUのエルフ・コスチュームの収集だったりする。 エルフ、シルク、風・・・等々。 全てのシリーズごとに1キャラずつ作っていたりするあたり、彼女も変人の範疇だろう。 「このアイリスも欲しがると思ってね。“タラマスカ”のギルメンに声をかけて集めてもらったものだ」 「あ・・・」 遠慮なく受け取ってくれたまえ。 そう言う銀髪娘の奥に、出奔したギルドのみんなを感じ、少し感激してしまうマージ。 「ちなみにスリーサイズはわたしのほうで手直ししておいたのでピッタリなはずだ」 その感激を粉砕する銀髪娘。 「マヤ」 「何だろうか?」 「あたし・・・あなたにスリーサイズとか教えた記憶は無いんだけど?」 「うむ。わたしも聞いた憶えは無い」 「・・・なら、なんで知っているのかしら?」 懐から取り出した紙切れにサラサラと書きつけ、 「合っているだろうか?」 「・・・もう一度聞いていいかしら。なんで?」 「おや、間違っていただろうか」 「間違ってないから問題なのよっ」 「おぉ、そうか。それは良かった」 ふっふっふ。 なにやら含み笑いをする銀髪娘。 おそらくその笑みに意味は無い。 強いて言えば、相手の反応を楽しんでいるだけだろう。 「種明かしをしよう。これだ」 マージの視線に説明の必要性を感じたのだろう、なにやら取り出す。 「・・・遠眼鏡?」 「その通り。ロレンシア魔術学院の備品だ」 私物化して数ヶ月経つが。 「比較対象がいれば、たとえ遠くても比率から計測は可能だ。マージ」 マッチ箱の役はケイにやってもらった。 銀髪娘のそのセリフに思い当たるマージ。 「そういえば・・・」 この前、この銀髪娘の相棒の力エルフが、自分のすぐ隣りで同じような姿勢を繰り返しているのが不審だったのだが。 「うむ。彼女の献身的な協力があってこその寸法直しだった」 実際にはケイの良心を利用してこき使っただけだが。 善人の苦労症である、かの接近戦特化エルフはいつも貧乏くじをひく。 心の中で彼女に合掌した後、贈り物のアイリス装備を手に取るマージ。 「あら、ずいぶんと大胆なのね」 「うむ。色といい、精霊シリーズと同じ系統のようだ」 イッツ、グラマラス・バディ。 「セクシー路線で殿方のハートをゲット。ファンタジーのお約束だな」 なにやら感慨深く頷く銀髪娘。 「なんだか感動がうすらぐ分析だけど・・・でも、こういうのも悪くないわね」 これから暖かい季節になるし。 「どうだろう、さっそく試着してみては」 そして、さりげなく付け加える。 せっかくの“タラマスカ”のギルメンたちの贈り物なわけだし、と。 「・・・そうね」 お膳立てしてくれた、優しさを表に出さない目の前の変人ウィザードに感謝しながら、マージはアイリス装備を手に取った。 「ちょっと・・・やだっ、これ!」 ノリアにマジェスティック・ナインの声が響いた。 「お尻見えちゃってるじゃない!?」 アイリス・シリーズ、それは思いのほか過激な装備。
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