短編小説っぽいもの
題材“CC” --
本編
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外伝
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後書きコメント
『題材“CC”』
〜外伝〜 いったいどのくらいの月日が経ったのだろう。 数日などではきかないことだけは分かる。 数週間? 数ヶ月? それとも・・・ ナセリは城郭の端に座り込み、息を整えた。 ・・・本当に? 本当にまだ自分は“息をしているのだろうか?” ちくしょう。 ナセリはぶつかるように地面に横になった。 そうすることで、堅い石畳が彼の鎧を壊してくれれば良いと願うように。 いや、それは紛れもなく彼の今の願いだ。 その身を包む“近衛兵の鎧”を脱ぎ捨てられるなら、ナセリは喜んでその身を石畳に打ちつけるだろう。 城郭に身を叩きつけ、その壁面に突進するだろう。 だが、そんなことは無駄なのだと彼は既に学んでいた。 ここに閉じ込められてからの間に、嫌というほど。 ナセリが流した涙が血に汚れた頬を伝い、濡れた石畳に落ちた。 混沌の城郭。 魔王自らが執り行う降霊儀式の場。 鮮血の城で命を落とした天界の近衛兵たちの亡骸を用い、その器に悪霊を降ろす儀式。 かつては大天使の寵愛のもと、祝福の賛美歌を謡ったその口からはもう二度と神の息吹がもれることはない。 魔王の親衛隊の手にかかり、鮮血の城で磔となった聖者たち。 それも今では・・・彷徨い、生者を襲うだけの案山子。 それらが徘徊するこの城郭で、ナセリは生き抜いてきた。 多分。 そう、まだ死んでいない・・・はずだ。 ちくしょう。 ここでは喉も渇かない。 空腹も覚えない。 ちくしょう。 あぁ、まるで“人間らしさを一枚一枚剥ぎ取られるようだ”。 手に持った剣を見下ろす。 無数の刃こぼれ。 それなのに、その切れ味は一向に衰えない。 使えなくなどなってくれない。 だから、ナセリはそれを振るう。 選択肢は無い。 なら、悩むことにどんな意味があるだろう? 考えることの意味は? ただ、生き残るために殺戮を繰り返すだけ。 ちくしょう。 それは彼が最後に呟いた言葉。 彼の口からもれた、最後の、人間の言葉。 ナセリはもう識っている。 希望は無い。 光は無い。 彷徨おう。 執念も消え、執着も消え、憎悪も怒りも、絶望さえも消え。 そして、ナセリは考えるのをやめた。
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