短編小説っぽいもの
あたしゃ天使じゃないけどさ。 --
本編
『あたしゃ天使じゃないけどさ。』
うぃっす。 ・・・日記の書き出しって挨拶いるのかな? まーいいや。 これはあたしの初日記ってやつだ。 うん、何事も初ってのはういういしくていいやね。 ほら、あたしゃMUの中に住んでるようなもんだからさ。 ヒマなわけよ。 で、有意義に前向きに生きるべく時間の使い道を考えてさ、日記でも書いてみようかと思ったわけ。 ムラサキシキブとか、ああいう感じ? あー、でも古典はイヤだな。 知ってる? 桃太郎のお婆さんって、御伽草紙によると40歳なんだってさ。 うは、ありえねー! 女ってもんをバカにしてるよね。 まー、当時は四十で男もジイサマだったのかもしんないけど。 脱線脱線。 ごめん、まだ慣れてないからさ。 面倒臭い女とか言わずに付き合ってくれたまえよ、男性諸君。 初だからさ、初。 あたしゃ天使じゃないけどさ、サガっていうのかねぇ・・・ 妙にヘタレな連中と縁がある。 あたしのほうもほっとけなくてね、仕方なく付き合ってやるわけよ。 で、あたしが知ってる中でも超弩級にへっぽこヘタレEEに出会っちゃってさ。 出会っちゃったのが運の尽き。 仕方ないやね。 しばらくは付き合って・・・おー、きたきた。 あ、コケた。 泣くな泣くな、って泣いてねーのか。 顔面から地面に突っ込んで何が楽しいんだ、おめーは。 ヘンとこでタフだね。 紹介するよ。 この脳天気に笑ってんのがさっき話したへっぽこヘタレEE。 名前は・・・なんだっけ? まーいいや、へっぽこで。 ヘコむなヘコむな。 そんなことより狩りでも行くか! へ? 変化指輪でノリア・デビアス間の行進ツアーがいい? またか。 いや、お前さんが楽しいならいいけどさ。 街の外に出ないとLv上がんねーぞ? バカ。 街の外っつったって、ロレじゃLv上がるわけないだろ。 羽生やしといて何言ってんだか、この子は。 まったく・・・Lvも上げないで何が楽しいんだかなぁ。 自分で分かってる? それって逃げだよ、逃げ。 変化指輪で行進して、珍しがられてさ。 でも、それでかけられる声ってのは一時のもんじゃないさ。 それで一体感なんて、欲なさすぎ。 もっと勇気出して、野良PTとか行けって。 クエはいいぞー。 Lvも上がるし、BCは混も返ってくるしな。 お前も早く二次羽つけたいだろ? な? ・・・いや、三次羽は無理だろ。 たしかにゴージャスだけど。 お前、ヘンなとこで野心でけーな。おい。 そのくせ恐がってPT募集とかダメなのな。 まったく・・・まー、いいや。 こいつ脳天気に笑ってるけど、あたしが出会った頃はすげー暗かったんだよな。 うじうじしてさ。 マイナス思考こそ我が信条かって勢い。 見てて痛々しかった。 変化指輪つけて行進してさ、通りすがりのPTとかに声かけられて笑ってるわけよ。 でも、その後は決まって羨ましそうに連中を見送ってんのな。 なんか無理して愛想笑いしてるように見えちゃってさ、見ててたまんねーわけよ。 昔イジメられててさ、でも友達作りたくて、そんでいつも無理に笑ってる。みたいな。 なんだよ、その作り笑い。 必死に笑顔作ってさ、死にものぐるいでぶらさがって生きようとしてんの。 ムカつくよな。 あたしゃ本気でぶっとばしてやろうかと思ったね、こいつも、こいつの人生も。 ま、あたしゃ天使じゃないから救ってなんかやんないけどさ。 でもまぁ、一緒に行進に付き合うくらいはしてやるよ。 あ。 でもな、ずっとこんなこと繰り返してちゃダメだぞ。 分かってんのか? ブンブン頷きやがって・・・ほんとに分かってか不安になるな、おめーは。 んじゃ交換条件だ。 百歩譲って、自分から野良PTしなくていいわ。 最初はな。 最初だけだぞ? そのかわり、向こうから声かけてきたら断んな。 いいか、ぜってーだ。 約束だぞ? これ破ったら、あたしゃお前を見捨てっからな。 お前に声かけられても無視る。 本気だぞ? あたしゃ無視には慣れてんだ。 いつも誰にも見えてないしな。 バァカ・・・あたしのことはいいんだよ、それより約束。 よし。 んじゃ、行くか! ん? なんだよ、ヒマか? まーそうだよな、もうロレとか初期マップで遊んでる初心者なんていねーもんな。 誰にも出会わねぇんでやんの。 しょうがねぇ、タルカンでも行くか。 無課金だから歩きだけどな。 遠いけど大丈夫か? ・・・そりゃ確かに途中で誰か会いそうだけどな。 やっぱヘンなとこでタフだわ。 いやいや、こっちの話。 うし、あせらずにのんびり行くか。 今つけてる指輪の制限時間切れて壊れても、変化指輪の予備はたっぷりあるしな。 っつーか、変化指輪ドロップのときだけ異常にはりきって狩りしたんだな。 倉庫ID一杯に変化指輪ってキモい絵にあたしゃひいたぞ。 そのくせ毒ミノ指輪だけたかられて安く買われやがって。 ほんとバカなやつ。 バカ、ヘコむなよ。 今バカって言ったのは悪口っていうよりは・・・あぁもう。 ほんとバカだな、おめーは! うがー、泣くなっ! このバ・・・バ・・・へっぽこヘタレEEが!! ・・・。 へっぽこはいいのか。 分かんねーな、おめーは。 大体へっぽこって言われたらムカつくだろ、ふつー。 怒れよ。 お前、自分で言ってるほどエナ低かねぇぞ? いやマジマジ。 低いのはむしろ背とか、胸の数値とか・・・お、ヘコんでるヘコんでる。 あ、怒った。 そこは怒るのか。 あぁ、分かってる分かってるって。 努力してんだろ、お前さんなりに。 牛乳がぶ飲みって、古典的だな・・・言っとくが、牛乳暴飲には気を付けろ。 ありゃ動物性脂肪が高いからな、脂肪を分解するのにカルシウム使うんだ。 で、カルシウムは骨を削って生成される。 そう、牛乳ってカルシウム高いけど、あれだけ飲むと逆に骨に悪いってこともありうる。 ・・・らしーぞ。 まー、白米は健康にいいとか、栄養は取るほどいいって信じてた時代のツケだな。 日本人の痩せてるのに糖尿病とか、それが原因だろ。 よく知らんけど。 ・・・ごめんごめん、また脱線した。 努力の話だろ、おぼえてるって。 毎晩あやしげな儀式までやってるもんな。 尺取り虫みたいな動きしながら・・・見てて、ちょっとキモいけど。 え、あれ美容体操だったのか。 いや・・・てっきり諦めて神頼みに走ったのかと。 全力で滝のように泣くなって。 努力は認めるよ。 うん。 でも・・・お前見てると、あれだな。 無駄な努力はないって言葉、あれウソだよな。 結果出ないとダメってことはあるんだと、しみじみ思ったわ。 世知辛いやね。 美は甲子園よりシビアだ。 くぅ、女の世界はハードだぜ。 あたしゃ、お前に妬まれていつ刺されるかドキドキしてるもん。 我ながら美って罪だよなー。 罪人ってのは罪滅ぼしってのをしなきゃいけない。 それが人間のルールらしい。 あたしゃよく知らないけど、でもま、ルールじゃ仕方ないよな。 なんかしてやりますかねぇ。 ヘタレへっぽこEEのためにさ。 あ。 言っとくけど、あたしゃ天使じゃないからね。 何度言ってもこいつはあたしのこと“天ちゃん”とか呼びやがるけど。 誰が“天ちゃん”だ。 あたしが“ちゃん”付けされるよーな可愛いタマか? あたしゃ天使じゃなくて守護精霊だ。 そういやこいつ、あたしが他人に見えない仕様なの知らずにGEMで購入したんだよな。 コスのつもりだったらしーけど。 でも残念、MUは“後ろめたい利益をこっそりとご提供します”が仕様なんだな。 あいつ課金して○○してるぜー、ってのを守らなきゃって思ってるらしい。 売り上げを守るのに大切だと思ってんだろ。 MoEみたくコスで買う感性とかは想定にねーんだよな。 ガチャも課金もこっそり出来るように! そんなに後ろめたいことか? まーいいや。 一介の新実装ペットだかんね、そんなあたしが考えてもしゃーない。 んじゃま、罪滅ぼしにあたしに出来ることでもやっちゃおうかね。 女、汝の罪は美。 うはは。 よしよし、このへっぽこヘタレEEの露店をこうやって・・・うん、こんなもんか。 あ。 言っとくけど、これ守護精霊なら誰でも出来るワザってわけじゃあない。 あたしだからこそ会得し得た極意とでも思いたまえ、ふっふっふー。 ん? いや、なんでもない、なんでもない。 おめーは気にすんなって。 何もやってないから。 ほんとほんと。 ほら、前見て歩かねーと通りすがり見落とすぞ? ・・・人見たら寄ってくくせに、なんで野良誘う勇気は出ないかね、こいつは。 お、かかった。 釣れたのはナイトとウィズと魔剣士・・・ほぅほぅ、悪くないじゃないか。 これでEEのこいつが入れば、PTの面子としちゃなかなかだ。 って、こら! バ・・・ヘタレへっぽこ、逃げんな!! 猫のよーに首もと持ってやる、猫のよーに。 ジタバタすんな。 ほら、せっかくPTメンバに誘ってきたあいつらが戸惑ってるだろうが。 そう。 いや、間違いじゃねーって。 あいつらが、お前を、PTに誘ってきたの。 ・・・なんで途方にくれるか。 あ、こっち見んな! 上見たら・・・ちっ、気づきやがったか。 どうだ、あたしの美しい筆跡。 露店に輝くPT募集の文句。 うーん、我ながら達筆にして名文句だ。 床の間に飾っておいてもいいぞ? ・・・パニくんな、パニくんな。 おいっ、こら! 聞けって!! あたしと約束したよな。 向こうから誘ってきたらPT断わんねーって。 うっさい、言い訳すんな。 言っとくけど、あたしゃ約束破られんのキライだから。 すげーキライ。 泣くな!! パニくんな!! 頷けっ、あいつらに!! ・・・。 よし、それでいい。 大丈夫だって。 露店にLvも書いといたから、無茶な狩り場にはいかねーだろ。 へっぽこEEっても書いたから、こいつらも覚悟してるはずだ。 うはは。 お。 覚悟決めたか。 よしよし・・・って、こら! お前、何すんだ。 よせって! じたばた。 あたしを荷物に押し込んでどうする気だっ。 は? 耐久が減ったら消えちゃう? ・・・。 ・・・・・・。 バカか、お前はっ・・・!!! 狩り場で使わなきゃ意味ねーだろ、あたしらペットは!? ダメージ吸収30%って読めねーのか、おいこら。 ・・・な、泣きそうな顔で見んなよ。 あーこぼれる、こぼれる! わぁったよ! しゃーない、大人しくしまわれてやるよ。 まったく・・・こんな使い方されてる守護精霊なんて、あたしくらいじゃねーか? 守護の名が泣くぜ、ぶつぶつ。 あー待て待て。 おい、そこのナイト。 そーだ、おめーだ・・・って、こら話を聞けよ。 くそぅ、聞こえてねーのか。 まぁいいや。 言っとくけどな、あたしが見てないからってこの娘にヘンな気起こすんじゃねーぞ。 妙な真似したら血の雨降らすからな。 あと、ヘタレへっぽこ。 そう、おめーだ。 いいか、頑張ってこいよ。 土産話、楽しみにしてっからな。 あとな。 あのナイト、けっこーイイオトコだろ。 挙動不審なお前にも物怖じしてないし、気長そうだしな。 そこ大事、お前みたいなの相手には。 清水の舞台から飛び降りるつもりで張り切ってPTしてこい。 押し倒す勢いでな! ほら。 あたしゃ天使じゃないからさ、お堅いこたぁ言わねーよ。 じゃあな。
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