短編小説っぽいもの
宝探し 〜ピルグリム〜 --
本編
・
後書きコメント
『宝探し 〜ピルグリム〜』
〜プロローグ〜 それは唐突だった。 「・・・は要りませんか?」 「え?」 相手が戸惑っているのを見て取り、男はもう一度繰り返した。 親しみにあふれた微笑をにじませながら。 危害を加える気など毛頭無いのだと、そう言わんばかりの口調で・・・ 「宝の地図は要りませんか?」 〜1〜 「ゆんさん、ゆんさん・・・」 呼びかけてみた。 「・・・つんつん」 つついてみた。 「・・・返事がにゃい。ただの銅像のようにゃ」 きょろきょろ。 ( (°°;)。。。。"((;°°) ) どきどきどき・・・キュキュッ。 (額に“肉”と・・・_〆(。。)カキカキ) 「(=ΦwΦ=;)・・・」 やっぱり反応は無い。 ここはレムリア・ワールド、1サーバーはデビアスのマロン前。 綺羅連合ギルドの“いつもの場所”だ。 化け猫が清書を一筆終え、さてどうしたものかと思っていると 「@@猫さ〜ん、ゆんさんどうだった?」 (Σ(=ΦwΦ=||びくぅっ) 「@@おぉ、0さん^^」 飛び上がるほど驚いたことなど、おくびにも出さずにギルチャで返事をする。 内心は ( (((=ΦwΦ=;))ドキドキドキ・・・) だったが。 「@@どうやら、銅像と化してるみたいですにゃ」 「@@ほむ」 「@@あはは、なでぃちんだねw」 そう言った魔剣士の遊魂境も“綺羅の銅像看板”として名高かったが。 「@@なでぃさんもよく銅像になってましたにゃあ(笑)」 「@@ウンウンw」 「@@ん〜、どうしよっかぁ?」 「@@そうですにゃあ・・・とりあえず、集合しません?」 「@@(  ̄ー ̄)ゞラジャ」 仲間の綺羅メンを待つ間、化け猫は動かないギルマスに目をやって、考えた。 「・・・何か物足りないにゃあ」 (=ΦwΦ=)うずうず。 猫は自らの芸術本能と闘いを始めた。 「・・・焼き鳥っ!?」 ゆんゆんは跳ね起き、荒い息をつきながら冷や汗をぬぐった。 あぁ、なんてひどい悪夢だったのだろう。 まだ太鼓を打つような鼓動が早いのが自分で分かる。 「あ、起きたにゃ」 「え?」 周りを見回す。 自分を囲むようにして、いつもの綺羅メンたちの顔があった。 「ヾ(* ̄ ̄ ̄ ̄▽ ̄ ̄ ̄ ̄*)ノおはよう」 「おはようございます♪」 「(* ̄0 ̄*)ノオハヨー」 次々にかけられる朝の挨拶。 時間的には完全に夕方近くだったが。 「(〃 ̄ω ̄〃ゞエヘヘ」 照れつつ、ゆんゆんは悪夢を思い出して、心の中で呟く。 (めそぉ。・゚・(*ノД`*)・゚・。) “めそ”。 それは“しじみ”と並ぶ彼女の愛玩怪生物で、綺羅ではお馴染みの名前だったりする。 ちなみに、“しじみ”は化粧が下手らしい。 化け猫に言わせると、「あの口の周りの赤は絶対に口紅以外の赤いナニカにゃ・・・」ということになるのだが。 「ゆんちゃも起きたし、狩り逝こ〜^^」 「漢字間違ってるよぉ〜w」 「いあ、ある意味間違ってない(〇 ̄m ̄)ププッ」 綺羅メンといつもの会話をしている内に、ゆんゆんは悪夢の嫌な感覚が消えていくのを感じた。 うん、やっぱりイイ! MUはMMOで、それは大好きなみんながいるということなのだ。 珍しくスムーズに狩場を決め(雑談チャットに流れ込むことも多い)、いざ。 PTを組み、各自で補給を済ませるべく散っていく。 ある者はバズ倉庫へ、ある者はポーラの薬屋へ・・・ 「あ」 と、遊魂境が足を止めて振り返る。 「ん?」 ギルマスの顔をまじまじと見つめて、ちょっと言いにくそうに 「そ、そのままで行っちゃう・・・?」 「おかえり〜^^」 と迎えた仲間に返事もせず、ゆんゆんは洗顔道具一式を持ったままで 「にゃんこはドコ( ゚д゚)イッタ」 「え? さ、さぁ・・・」 今の彼女は慈愛にあふれたEEではない。 血に飢えたAEだ。 見つかったが最後、あの猫は綺羅ギルマスの赤ネームに貢献することになるだろう。 「さっき倉庫キャラにチェンジするから、先に行ってて・・・って」 「にゃんこはドコ( ゚д゚)イッタ」 「い、いあ、だから・・・」 「ドコ( ゚д゚)イッタ」 逃げました。 5分後。 「@@ただいまですにゃ^^」 「@@ピョン( ゚д゚)ヤン」 「@@ねこさん、逃げてぇ〜〜・゜・(ノД`)・゜・」 化け猫は慌てて倉庫キャラに戻るべく、キャラクター変更をクリックした。 どうやら、まだ少し早かったらしい。 待とう。 10分後。 「@@[障子]wΦ=;)ちらっ」 どきどきどきどき・・・ 「@@はよこぉい〜w」 (*=ΦwΦ)bグッ ウェアウルフの群れを狩りながら、 「爪出ない><」 「ヽ(`Д´)ノ」 「MUディだよねぇ?;;」 「あ、そういえばイベ中でしたっけ^^」 「(゚Д゚)≡゚д゚)、カァー ペッ!!」 「運営チームを敵に回す発言は・・・」 などと賑やかにチャットする綺羅メン。 いまだにクライウルフはイベント対象外マップだということは誰も気づいていないようだ。 もっとも、誰かが気づいたところで、どのみち気分で狩り場は決めてしまうのだけれども。 「あ、そうそう」 「(; ̄ー ̄)ん?」 化け猫は忘れるところだったメールのことを思い出した。 運営している自サイト、“化け猫長屋。”のメッセージフォームから送られてきたメールで会った男の話・・・ 「ちょっと皆さんに聞きたいことが・・・」 「なになに?」 「ええ、実は・・・Σ(=ΦwΦ=||ぐひゅっ!?」 「Σ( ̄□ ̄|||逝った」 いつのまにかすぐ背後に迫っていたソラムの豪快なフルスウィングを喰らい、いきなりポックリ逝く。 夏は暑いから・・・などと言って、回避ナイトのくせに兜を脱いでいたのが致命的であった。 「ムーだぁぁぁぁっ」 「バルバルも来た><」 ソラムの後ろから、妖艶なバルラムも魔弓を射掛けてくる。 とはいえ、チャットだけ見れば阿鼻叫喚の地獄絵図なのだが、実際は・・・ 「ぱわたん逝け〜w」 そこはドドM倶楽部の愉快な仲間達、むしろ率先して突っ込んでいく。 そして、その先頭には 「オラ(゚Д゚)オラ(゚Д゚)オラ(゚Д゚)オラ(゚Д゚)オラ」 我らがギルマス、EEのゆんゆんが虹色のかき混ぜ棒を振るっているのであった。 「~合流してから、さっきの続き言いますねぇ^^;」 PTチャットで響く化け猫の声。 「~え?」 「~にゃ?」 「~明日でもいいの??」 「~みゃ?」 「~(〇 ̄m ̄)ププッ」 今日中には辿り着けないだろうと、方向音痴っぷりをからかっているのだ。 一瞬、言い返そうとした化け猫だったが 「~えぇっとですねぇ」 話し始める。 どうやら思うところがあったらしい。 そして、化け猫は単刀直入に聞いた。 「~宝の地図って、どう思います?」 しばらくの沈黙の後、 「~・・・え?w」 明らかに説明不足な猫だった。 〜2〜 (ドロップ・ポイントねぇ・・・) 昨日の化け猫の話を思い出しながら、ロレンシアの酒場でpower-oは眉を寄せた。 腕組みしたまま、目の前に置かれたままのパスタ料理にも手をつけずに考え込む。 まるで、目の前の料理が気に食わないように見えることには気づいていないようだ。 (ば、ばれたかしら・・・?) と思っているのは、この酒場の女主人マダムライオンだ。 何が「ばれたかしら・・・?」なのかは謎のままにしておくとして、 「(~-_-)ムゥ」 (絶対に嫌だってわけじゃあ、ないんだけどなぁ) “宝の地図”とは“ドロップ座標”のことだった。 以前から流布している説で、どこどこで倒せばドロップする・・・ドロップする座標は設定されている、等々。 もっとも、細部は色々と違っていたりする。 “どこでもドロップ判定はあるが、特定の座標だと飛躍的に高い”というおとなしめな説もあれば、 “設定された座標以外ではドロップしないのだから、そもそも他の座標で倒す全ては無駄である”という激しい説まで。 そもそも、特定の座標でも“確実にドロップするというわけではない”ので、実のところ実証は気分の問題レベルを越えられない。 あくまで、特定の座標だと“ドロップ率が高い”か“特定アイテムのドロップ率が設定されている”でしかないのだ。 当然、落ちる率が高くならなければ“運が悪かった”と言えるし、落ちる率が高くても本当に座標のせいか“運が良かっただけ”なのかは曖昧のままでしかない。 目に見えてドロップが良い期間というのは昔からあるので、その範疇だと言っても同じく“そうかもしれないし、違うかもしれない”程度どまりなのだ。 違う場所でドロップすれば、“そこもポイントだった”と増えていくだけである。 かといって、それが後付けの言い訳どまりかというと、それは分からない。 逆に、真実を射抜いているかだって分からない。 一応、論理的に言って・・・個人的感想に止まらない根拠に足るかもしれないのは、“エミュ鯖なら座標設定らしい”ということくらいだろうか。 いわゆる違法なエミュ鯖とどこまで構造が同じかは実証外だが、わりと根源的なシステムに関わる部分なので、やや信頼性が高いとは言える。 少なくとも、数人のたまたまのドロップ結果で判断するよりはマシだろうか。 証明には不向きな、難しいグレーゾーンの探求。 「(~-_-)ンー」 (でも、それ以前の問題なんだよなぁ) 重いため息をつく。 彼にとって、信頼に足る推論かどうかは最重要問題ではないのだ。 実のところ、もっとシンプルな理由で心が動かないのである。 それは・・・ (“遊ぶ”の許容範囲次第、だよなぁ) もし仮に、特定の座標で倒せばドロップ率が高かったとして。 万が一、それ以外の場所ではドロップしないとしても・・・ (座標を気にしながら遊んで、楽しいかなぁ?) 一体一体に座標がずれないか気にしつつ、狩る。 チャットは? 何も考えずに楽しむ爽快さは? 常に気にしながら・・・遊ぶ? 「・・・引き換えにするものが割に合わない気がするんだよなぁ」 ゲームを遊ぶということに対して、本末転倒な気がしてしまうのだ。 それぞれの人次第だが。 それで自分は本当に楽しめるのだろうか・・・? 「ごめんなさいね。あなたのいうとおりだわ」 「え?」 すっと手が現れ、power-oが睨みつけていた目の前のパスタの皿を取り上げて、 「これ・・・つくり直すわね」 こうして行動に出たことで、むしろ気に病んだことが晴れた・・・そんな、悪戯がバレた少女のような仕草でマダムライオン。 そして、良心を捨てずに済んだ彼女は、ばつが悪いような感じで言った。 「失敗してたのは気づいてたんだけど、そんなに気になった・・・?」 「宝の地図かぁ・・・♪(〃▽〃)」 ゆんゆんは夢見るように呟いた。 “宝の地図”! なんて心躍る響きだろう? この言葉にドキドキワクワク、うずうずするものを感じずにいられるだろうか? 彼女にとって、“宝の地図”という響きはまさに“ (*≧m≦*)ウププ ”なワードだった。 宝探し、そんな童心に帰るような経験をしたのはどれくらい前になるだろう。 自分を待っている、どこかに埋もれたままの秘宝。 ( (-゚ヽ)トッ!! (ノ゚-゚)ノテモ!!.。゚+.(゚ー゚)ノ。+.゚ イイ!! ) 通常PT狩りが好きだ。 大好きなみんなで、チャットをしながら笑える・・・そんな狩りが大好き。 移動コマンドが課金になったとき、どんなに裏切られたような気がしただろう。 経験値のためにDSとBCに、石のためにCCに。 それを責めることなんて、出来ない。 そして、その合間はほんの僅かな時間でしかないというのに・・・その間に遊ぶために、移動することさえお金を払わなければならなくなった。 一度手にした大切なものを取り上げられることは、最初から与えてくれなかったよりも残酷だ。 けれど、それでも距離の近いCWにギルドPTで行ったりする。 クエストでなく、仲間と遊ぶことを選んでくれたみんなと遊んだりする。 たとえ、公式イベントの恩恵から外されたままのマップだとしても・・・代えられないものがあるのだ。 手放したくないものがあるのだ。 それが消えたら終わり、そんな・・・最後の最後まで、奪われたくはないものが。 もちろん、楽しいという過程だけじゃない。 そりゃあ良品ドロップを目当ての狩りでもある。 それはそれで完全に否定はしない。 今回の話だって、“宝”だからこそ胸が躍るというのもまた、一面の真実かもしれない。 けれど。 欲、と。 単純にそう言ってしまうと少し違う気がする。 遊び、狩りをし、良品や宝石をドロップしたとき。 まるで・・・そのゲームに愛されているような、そんな錯覚を感じると思うのだ。 石が大量に落ちさえすれば良い、そういうんじゃない。 それは欲だ。 けれど、違う・・・ 母親が、子供に愛されているという実感が必要なときがあるように。 ゲームにも必要なものがあるのだ。 欲と紙一重の、欲で縛りつけるのではない“惹きつけるもの”が。 わたしたちはロボットじゃないから。 報われたいのだ。 落ちないと分かっている狩り・・・そんな気持ちで臨む狩りは傷ついた祈りのようで。 それは世界に拒絶され、無視されているような。 ねぇ、神さま。 一文字の御使いたちが使える神さま。 世界は、わたしたちを必要としてくれますか? 愛してくれますか? どうか“言って”下さい。 それが必要なんです。 もはや、祈るような狩りには疲れ・・・世界に愛されていないと感じた生命は、この世界から消えていく。 それでも。 わたしたちは狩りに行く。 祈るような狩りに、巡礼者(ピルグリム)のように・・・。 「・・・この子も育てないとねえ」 遊魂境は愛用の盾を磨きながら、少しだけ余分に力を入れてゴシゴシしてやる。 もう何周したことだろう? +9。 OP20。 いつになったら? まったく、出来の悪い子供ほど可愛いとはいうけれど・・・ (出来が悪すぎるヽ(`⌒´メ)ノ ) などと思いつつも、やっぱり育てるのはやめられないのだ。 だが。 かと言って、お財布は天然の湧き水ではないわけで。 ほんの30分ほど前までは倉庫にあった宝石。 今はもうどこにもない、この子に食べられた石。 「まぁた稼がないと・・・」 と軽く嘆息してみるが、実のところ、そんなにめげているわけでもなかった。 石はまた貯めればいいし、一々気にしていたらもたない。 (ま、そのうち出るでしょ) ってなものだ。 「でもな・・・」 気がかりを思い出す。 (あの子、まだシャキーンしてるよねえ) シャキーン=借金。 綺羅ギルマスゆんゆんは、夢の高速布団叩き(※EXエレメンタルメイスとも言う)のために家計簿はマイナスだ。 貸主はいつでもいいと言っていたし、そもそも滅多にMUにはINしてないけれど。 それでも、返せるに越したことは無い。 「“宝の地図”か(~-_-)ウムム」 ドロップポイント。 それも一つの工夫だとは思う。 工夫はいい。 普通では到底狩り出来ないカントル遺跡で、地形やスキル特性などを駆使して狩りを可能にするように。 割りに合わなくてもいい、不可能を可能に変えることは大きなことだ。 もちろん、割に合う方が良いに決まってはいるけれど。 けれど割に合わなくても構わない魅力を感じるのも確か。 (いっちょ、付き合いますかねえ?) 「 ´3`)´3`)´3`)´3`)´3`)´3`)´3`)ウフフフフ 」 〜3〜 「それじゃ、こうしませんか?」 再び綺羅メンが集まったところで、化け猫の提案。 「綺羅メンで作るんです・・・“宝の地図”を!」 そう。 “あの男”は宝の地図を欲しいかと聞いてきた。 もちろんタダではないけれど、それだけの価値はあると思いますが? と。 彼から宝の地図を手に入れることは出来る。 代償はなんとかなるだろう。 けれど・・・ 「うちらで作るの?」 綺羅のハイブリット魔剣士の一人、鋼鈴。 「ですよぉ^^」 化け猫はルイス・キャロルのシャム猫のような笑みを浮かべて、 「みんなで狩りして、ドロップしたら座標をメモしていきましょう♪ ね、これなら0さんもいいでしょ?^^」 「ウンウン」 「完成までは凄く・・・すぅっごく時間がかかるでしょうけど、これだって宝探しみたいなものじゃないですか?(笑)」 「あはは、そうかもw」 「ゆんちゃもそれでいいの?」 「|-`).。oO(地図が完成するまでにお金持ちになってるかも」 「Σ(OωO;)」 「あはw 地図が完成=それだけロックとかが出てるってことだもんね〜(*≧m≦*)」 「自信あるの?w」 「´3`)´3`)´3`)´3`)´3`)´3`)´3`)ウフフフ」 「´3`)´3`)´3`)´3`)´3`)´3`)´3`)ウフフフ」 そんな、いつもの雰囲気に戻った綺羅メンを見回して 「さ、辛気臭い会議はおしまい! さっそく、探しに行きましょう♪」 化け猫が手を叩いた。 「おおー!!^^」 「<(゜ロ゜;)>ノォオオオオオ!!」 「にゃ?」 その綺羅メンは少し赤面しながら、 「いあ、誤爆w」 〜エピローグ〜 「本当に、いいのですね?」 男は傍らのスケイルナイト・・・化け猫に念を押した。 「ええ。ねぇ、思うんですけど・・・宝探しって、見つかるまでが華なんじゃないでしょうか?」 男は疑問を示すように眉を寄せて見せ、先を促した。 「手に入れてしまった花は枯れてしまう。人は欲深い生き物だから・・・満足な愉悦は続かない」 自分だけで味わうのにも飽き、他人に誇り出し。 それにも飽きたら・・・次を求める。 「御覧なさい」 化け猫は笑顔で仲間を指差した。 悲鳴ともつかぬ歓声を上げながら狩りをする綺羅メン。 「彼ら・・・いえ、私たちはまさに“途中”です」 プロセス。 輝くものを手にしていないがゆえに、輝ける時間。 「私は思うんですよ。“宝探し”って、宝を見つける前に・・・」 「前に?」 「実はもう手にしているんじゃないかって、ね」 男は黙っていた。 化け猫は明るく、 「それに言うじゃありませんか? 謎が多いほど素敵なものといえば・・・」 男は苦笑しながら、 「宝探しと女心」 「やれやれ・・・それじゃ、これで失礼するとしましょうかね」 茶目っ気たっぷりに「お買い得だったのに」と呟きながら、男。 そちらを向いて、 「ありがとう。そして、さようなら」 化け猫は「その地図・・・」 満足そうに微笑んで言った。 「私たちには要らないものです」 「~にゃんこぉぉぉっ」 「~Σ(=ΦwΦ=||」 PTチャットで叫ばれ、はっと我に返った。 化け猫が長話をしている間に、どうやら危険なモンスのわき場までPTは進んでしまったらしい。 「・・・いつものことですにゃ」 きっと、今頃は誰かが死んでいるのだろう。 ウェアウルフ狩りに行って、ふと気づけばバルラムやソラムと戦っている彼らだ。 どうやら、“綺羅の宝の地図”の完成は遠そうだった。 化け猫は悪魔の翼を羽ばたかせる。 今、この手には何も掴んでいないけれど。 きっと、心の中で既に手にしている輝きを求めて・・・狩りという名の巡礼を続ける。 「~出たぁぁぁぁっ」 「~Σ(=ΦwΦ=||おぉっ♪」 「~帰還文書がw」 ・・・完成しないかもしれない。 けれど、きっとそれでもいいのだ。 ※今回に限らず今までほぼ全てについて共通ですが・・・ 後書きコメントや外伝などは、上の“本編”“後書きコメント”などをクリックして下さいね♪
←↓好印象を持って下さったら、是非♪(小説タイトルを記入して頂くと評価:☆に反映されます)