短編小説っぽいもの
題材“再生の果実” --
本編
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キャラクター紹介コメント
『題材“再生の果実”』
〜カイT〜 わたしは異世界を眺めている。 たとえば、今わたしの視線の先にいるのは二人のギルメン。 キャルはBC特化Kで、わたしには少し高慢にも思える青年。 サラはEE、いつもキャルと一緒にPTをしている。 キャルはいつも得意げで、サラはいつも控えめな笑みを浮かべている。 それは今日も同じで、きっと明日も明後日も同じだ。 わたしの眺める異世界の風景。 異世界。 それはMUという仮想の世界という意味じゃなくて。 わたしには届かない、触れられない世界だから。 彼らはいつも一緒にPTをしている。 隣りにはいつも彼が、あるいは彼女がいる。 それはきっと、彼ら二人には限らなくて。 この世界にいる多くの人がそうなんじゃないかと、わたしは焦がれる。 きっと、そう。 だから、異世界。 わたしとは違う。 「カイさぁん、一緒に来る?」 わたしに向かってサラが誘う。 それはいつものことで、わたしはいつものように「いや、大丈夫」と答える。 そしていつものように、わたしは胸の疼きをおぼえる。 大丈夫? なにが? どこが? 本当は行きたい。 誰かと一緒にいたい。 彼らと狩りに行きたい。 けれど、わたしはきっと臆病すぎて、愚か過ぎて。 感情と本音を見せるのさえ怖くて、表情も変えずに生きていく。 わたしは敏エルで、それは弱いわたしには強すぎて。 ソロで生きられるのに、余分な存在としてPTに入るような気分になってしまうわたしは。 きっと弱い生き物なんだと、異世界を眺めながら思う。 〜サラT〜 あたしは何か違ってしまった世界と感じながら、今日も彼と狩りに行く。 「なぁ、サラ」 ん? 「どこ行くよ?」 どこでもいい。 きっとどこでも同じ。 原因は場所じゃないから。 じゃあ、何にあるの? この重くて苦しい気持ちの生まれた場所は。 彼の中? あたしの中? それとも、半分半分? どちらにしろ、一つだけ言えることは・・・それはきっと、あたしと彼以外のどこにも無いだろうということ。 原因は、あたしたち二人のどちらかにある。 それとも二人の間にか。 「カントルは全部ふさがってたもんなー」 うん、そうね。 あたしは彼の横顔を見る。 そして、ふと気づく。 そういえば、もう随分と正面から彼の顔を見た記憶がないことに。 「ロックにするか」 うん、そうね。 「おし、準備してくるわ」 あたしが一言も発しない間に狩り場は決まって、彼はいなくなる。 それを責めるのは身勝手なことは分かってる。 口に出さないあたしが悪い。 いや、そもそも・・・口に出す何かがあたしの中にあるわけじゃない。 どこに行きたいとか、別にあるわけじゃない。 ただ・・・ただ、何? 昨日、彼とこんな会話をした。 ううん、会話じゃないか。 彼は会話と思ってるだろうし、あたしもこんなの会話じゃないって言いたいわけでもないけれど。 とにかく、こんなチャット。 「サラがインする前さ、野良でDS行ったんだよ」 「そんとき組んだEE、途中で弓撃ちだすんだぜ?」 「別にサポ切らすわけじゃないんだけどさー」 「なんで?って思わね?」 「いくつダメ当たってるか知らんけどさ」 あたしは何も言わず、曖昧に微笑んで聞いていた。 いつもと同じように。 でも、心の中ではこう思ってた。 彼女はきっとダメージを与えたかったんじゃなくて。 きっと弓を撃ってみたかったんだ。 それはすごく似たようなことに思えて、すごく違うことなんだと思うけれど。 もしそう言ったとしても、彼にはきっと理解できない。 だから、言わない。 口に出さない。 ただ、微笑んでいる。 あたしのこの唇の形は意識したものだったはずだけれど、今ではもう固まってしまった。 最初は鎧で、いつのまにかあたしの皮になってしまったように。 あたしなりの防御だったそれは、いつしかあたし自身になってしまって。 影に呑み込まれたあたし。 今のあたしは・・・どっち? あたしは持ち物の中の赤と青の数を確認する。 準備なんてほとんどない。 はい、準備終了。 歩きながら、今日もいつもと同じ誘いと断りを交わしたギルメンの敏エルさんを思う。 格好良い、クールな女性。 「カイさぁん、一緒に来る?」 「いや、大丈夫」 それだけ。 なのに彼より多くて、それは会話として成立している。 いや、そんなことを気にしているわけじゃない。 それよりも・・・あたしもカイさんみたいに強ければって。 そう思うだけ。 〜カイU〜 きっと、最初が悪かったのだろうと思う。 敏エルだからなんて理由じゃなくて、ただ単に私自身の性格からPTを断った。 そのとき、相手が笑って言った。 「あー、カイさん敏エルだもんなw」 わたしは敏エルがソロに向いてるなんてことも知らなかった。 相手も悪気や嫌味じゃなくて、ただソロのほうがいいんだろうと思っての返し。 でも、それは私の心に刻み込まれた。 馬鹿馬鹿しいほど短い、些細な鎖。 ほんとに馬鹿馬鹿しい。 分かってる。 分かってるのよ、わたしだって。 その言葉が悪いんじゃない。 その言葉を発したギルメンが悪いんじゃない。 悪いのは、私。 あのとき、笑ってこう言うだけで良かった。 うん、行こう。 それだけで良かったのに。 あのときなら、わたしにも笑えたはずなのに。 そう、彼女のように。 サラのように。 〜サラU〜 「お」 モンスを吹き飛ばしながら、彼が呟いた。 「サラ、エナ上げた?」 え。 あたしはぎゅっと心臓を掴まれたような気がした。 「う、うん。・・・エナ実、二個食べたから」 楽しそうに剣を振り回しながら、彼。 「ダメ1上がってるw」 いつからだろう? あたしも以前は、こうやって成長を口にしてくれることを喜んでいた頃があったのに。 まるで自分が成長したことを喜んでくれてるような気がしてたのに。 いつからか、あたしは・・・ダメだ、こんなことを感じちゃダメ。 考えない、考えない・・・。 意識して、深く深呼吸をする。 まるで海中から顔を出すように。 息を吸い込んだとき、不意に涙が出そうになった。 なんで。 馬鹿だ、あたし。 「野良して思うけどさー」 あたしは野良をしたことがない。 「やっぱサラが最高だよ」 そんなこと、知らない。 「俺をサポすること第一に考えてくれるし」 第一? 第二はどこ? 教えてよ、ねぇ。 「余計なことしないしさ」 余計なことって何? 「だいたいさ、無駄って、無駄じゃん?」 無駄って何? ううん、無駄って悪いこと? 悪いことで要らないなら、誰もそんなことしない。 「お前、最高」 あなたは? 「やっぱ、お前いないときついわー」 ・・・。 「これからもずっと一緒にいような」 ソシテ アタシハ ツブサレル。 〜再生の果実が実装された。〜 「なーなー、公式見たかよ?」 ギルメンが集まっている中で、口火を切ったのはキャルだった。 「あー、見た見た」 「再生の果物だっけ?」 「ちゃうw果実w」 「似たようなもんやん!」 「惜しいw」 再生の果実。 かつてはガチャの極レアでのみ恩恵に預かれた、ステータスの振り直し。 それが誰でも手が届くようになった。 1ポイントあたり、1円で。 「うほw」 「マジか?」 「ガチ。ガッチャマン乙ww」 「みんなBCナイトとか、横並びになるなー」 「CC特化とかもいるんじゃね?」 「いあCC特化はクエこないからいいw」 わいわいがやがやと騒ぐ一同。 賛否両論、批判も多いが、そんな中で会話に入っていく様子もない二人のエルフがいた。 「カイさんとか、これ必要ないよねw」 「うんうん、敏エルって無駄ステないもんなー」 カイは聞いていない。 「サラにも関係ねえよな。お前も俺も無駄ステとか振ってねーもん。な?」 サラは聞いていない。 誰かが言った。 「なぁ、買うやついる?」 〜サラ、と彼女〜 「・・・サラ?」 狩りの準備に矢を補充しているところに声をかけられ、あたしは振り向いた。 「・・・」 (だ、誰だっけ・・・?) と一瞬悩み、閃いて目を見開いた。 「か、カイさんっ!?」 彼女が頷く。 「装備変えたんだ?」 アルゴスの精霊装備だったのが、なんだか落ち着いた色彩のエルフ装備になっている。 でも、そこはさすがカイさんというか。 シルクほど前面にではないにしても、可愛いに近いエルフ装備を着ているのに・・・ 「美人! ていうか、ほそい!」 「・・・あ、ありがとう?」 おぉ、困ってるカイさんの表情が新鮮だ・・・こんな照れ困ったような顔もするんだ? この人も。 「なんで!? あたしが着ても可愛いだけだったのに!!」 「なんでって言われても・・・」 と答えてから、カイさんが「後半、なにげにちょっと図々しいこと言ってる気がするよ?」と微笑う。 あ、カイさんの笑った顔って初めて見たかも。 「あはは♪」 そして、あたしがこんな風に笑うのも久しぶりかも。 それにしても。 くそぅ、モデルっていうのは元が良いんだな・・・なんて思う。 「サラ、敏エルにしたんだ・・・再生の果実?」 ちょっと驚いてる風のカイさん。 無理もないか。 あたし自身、驚いてるし。 キャルも驚いてたな。 あ、違った。 あれは怒ってただけか。 傷ついてたのかもしれないけど・・・あたしはそのことに気が咎めたりはしなかった。 ひどい? と、そこで気づく。 「カイさん・・・ひょっとして?」 あたしの問いに、おずおずと頷く彼女。 「カイさんも買ったんだ、再生の果実・・・」 「そう」 いつも通りの短い返事、だけで終わらなかった。 「EEにしてみたんだ。サラみたいに」 あたしみたいに? そう言われると、ちょっと困ってしまった。 あたしはずっとカイさんに憧れてて、EEだった自分に複雑な感情を抱いているからだろう。 「あぁ!?」 あることに気づき、あたしは叫び声をあげた。 「ど、どうしたんだ?」 驚いて戸惑うカイさんに詰め寄る。 「胸!」 「む、むね?」 「ない! ばいーんが!」 「・・・えぇっと・・・それはセクハラ、なのかな? かな?」 だが、あたしはそんな問いは聞いていなかった。 「なんでっ? どこいったの!?」 「いや、どこって・・・」 苦笑するカイさん。 「あ」 「うん?」 「あれ? 天使のブラとか、寄せて上げるみたいな」 「・・・コメントに困るな」 ううむ、謎だ。 謎は残された。 だって、アルゴスの精霊装備のときのカイさんって、凄かったわけですよ? ばいーん。 なのにやらしくなくって、格好良かった。 色気があるのにクールって、ずるいと思ってたくらいなのに。 「あぁ、そういえば・・・」 カイさんが何か思い出したように話し出した。 「ギルメンの男共が議論してたな」 「議論?」 「うん。曰く、精霊装備だと豊満な胸の谷間がシルク装備で消えるのは何故か?」 少し考えた後、 「・・・・・・バカ?」 うちの男共は。 「曲線美と直線美の狭間にある欺瞞の影を追いつめたい、らしい」 「・・・」 いや、あたしも彼らに期待してたり、幻想抱いてたわけじゃないけどね。 「俺たちは騙されてる! と被害を訴える声もあれば、精霊装備の胸は偽物と限らないという声もあってね」 「・・・この話、あたし興味もったほうがいい?」 「ふふ、大丈夫だ。もう話はついたらしいし」 「どういう結論になったの、って聞いたほうがいい?」 カイさんは肩をすくめて続ける。 ・・・こういう仕草がいやみなく似合うのはカイさんだなぁ、やっぱり。 「ヒガシーの発言でね、決着がついたらしい」 「Σがーんっ」 うわ、それちょっとショック。 ヒガシーというのは、この夏に引き継いだ今のギルマス東照宮さんのことだ。 DLで、紳士で、ちょっといいなって思ってたのに! 「何て言ったの?」 「“本当にそれがそこに実在するかは重要じゃない。大切なのは目の前のそれを信じるかどうかだ”」 「・・・」 「・・・」 さようなら、格好良かった貴方。 さっきまでは素敵だったわ。 「なんか・・・残念な人ね」 「うん、残念な人なんだ」 カイさんも気の毒そうに言う。 「なんか、しょんぼり」 「うん、しょんぼりだ」 なんとなく、二人でしみじみと分かり合ってしまった。 「・・・気が合ったところで、カイさん」 「うん?」 「狩り、行かない?」 「・・・一緒に?」 「あ、イヤならいいけど」 慌てて付け加えると、あたし以上に慌ててカイさんが叫んだ。 「イヤじゃない! 全然っ、イヤじゃない!!」 「・・・」 「あ・・・すまない」 血相を変えて詰め寄ったことを詫びるカイさん。 「そ、その・・・つまり、なんだ」 「?」 「わたしでいいのだろうか?」 「・・・」 よっぽどあたしは怪訝そうな顔をしたらしい。 「わたし、まだEEに慣れてないぞ? PTにも慣れてないし、楽しくないかもしれない」 「カイさん、PT嫌い?」 なわけないか。 だったらEEにしないよね? 「嫌いじゃない!!」 ・・・いや、そんなに激しく主張しなくても。 「あぁ、良かった。ひょっとしてPTするの楽しいと思わないタイプなのかなって」 思っちゃったじゃない、もう。 「わたしじゃない。サラ、きみがだ」 へ? 「あたし?」 「うん。きっと私は楽しい人間ではない、と思う」 そして小声で、「きみのようにPTに誘われる人間じゃないから」。 ・・・この人、人間とキャラタイプをごっちゃにした勘違いで何か劣等感持ってたり、する? と思ったところで、自分の考えに驚いた。 劣等感? カイさんが? うそ。 「一番縁遠いと思ってた」 「え?」 「あ、ううん、なんでもない。こっちのこと!」 あはは、と笑って誤魔化す。 そして、あたしは言った。 「あたしはカイさんをPTに誘いたいから、いま声をかけたのよ? ううん、ずっと前から思ってた」 そう、ずっと断られたけどね? 「そうか」 「うん、そう」 なーのーに、誰かさんは断ってくれてたわけですけどね? 「・・・同じだったんだ」 「え?」 「い、いや、なんでもない! なんでもないんだ、うん」 と言うから、私は聞かなかったことにしよう。 憑き物が落ちたような表情で微笑んで彼女が言う。 「うん、行こう。サラ、わたしもきみとPTしたい」 その言葉だけで充分。 〜サラとカイの、それから〜 「EEって・・・難しいんだな」 「うん? そうかな」 モンスに次々と弓を撃ち込みながら、あたしは首をかしげた。 確かにまぁ楽ではないし、コツもあると思う。 何より指が疲れる。 冗談抜きで指と手首なんかは痛めて、腱鞘炎になる過酷さがある。 「でも、難しいって感じる部分は・・・慣れじゃないかな」 「慣れ、か」 「まぁ、移動とか、釣りとかゴミ整理とか。欲言い出すとキリない難しいのはあるけど」 「移動」 うむ、と頷きながら彼女が言う。 「立ち回りは独特だな。それに・・・つい敏エルだった頃の癖が出てしまう」 「へぇ?」 気分が乗ったらマルチショットを叩き込む、敏エルになったあたし。 「モンスが寄ってくるとね、つい氷結で足止めしてからサラの反対方向に回ろうとしてしまう」 苦笑しながら彼女が言う。 「あぁ」 氷結の凍結効果はなにげに優秀だ。 慣れれば立ち回りだけでいいのだけれど、これまで使えていた氷結という知識があると、つい使いたくなる場面もあるんだと思う。 「モンスにAGがかからない仕様で良かった」 大真面目な顔でカイさん。 「氷結のつもりで、AやGのままモンスをクリックしてしまう」 「あははは♪ カイさん、もういっそ氷結おぼえちゃったら?」 と、目を丸くした彼女と目が合った。 「い、いいのか・・・?」 え? 「そりゃあ別にいいと思うけど・・・?」 というか、そんなに驚かれても。 「エナが下がるぞ? かなりAやGが弱くなると思う」 真剣な顔で訴える彼女。 その懸念はもっともだけど・・・そこまで真剣な表情で言わなくてもよくない? まぁ、バラエルの地位はすっごく低いけどさ。 でもギルドPTなわけだし。 「カイさん、あたしよりLvかなり上でしょ? 50くらい」 「うん」 と頷いてから、「あ、すまない。吸ってたか?」と慌ててゴソゴソし始める。 って、え? 「カイさん・・・? 勝手にPT切らないで」 「いや、でも・・・」 顔も上げない。 この人、こんなキャラだった? ええいっ、うじうじと! 「カイさんのLvのステなら、氷結まで敏に振ってもエナは充分。それであたしが死んだりするような狩り場行かないし」 「いや、しかし・・・」 まだ言いやがりますか、あなたは。 「カイさん。氷結まで敏振って装備もったら、ここで何ダメージくらい出る?」 「そ、そうだな・・・多分、400・・・いや、弓も上がるから500か600くらいだろうか」 うんうん。 「だが、しょせんその程度だ。無視やWで2000、3000と出る敏エルとは違う」 ・・・この人、大真面目に言ってるのよね? はぁ。 「カイさん、ちょっと厳しいこと言っていい?」 一回、誰かが言っとかないと。 と、何を思ったのか悲壮な表情・・・だけでなく、背筋まで伸ばして 「大丈夫だ、傷つく覚悟は出来ている。遠慮なく言ってくれ」 「・・・いや、そんな覚悟はいいから」 「む? そうか・・・そうだな、わたしの言い方が悪かった」 うんうん。 「全身全霊、全力をもって受け止めよう。さぁ・・・どんとこい!」 悲壮な表情で仁王立ち。 ・・・。 この人、こんな面白い人だったっけ? ま、いいか。 「一番ダメの出る主力で考えるのは火力組の考え方。カイさん、そのままでEEやってるでしょ」 「むぅ・・・?」 「EEはね、PT全体で考えるの。このPTで考えましょ」 えぇっと・・・ 「主力のあたしの与ダメが仮に2200から1900に下がったとして」 「うん」 「その落差は300。なら、カイさんが300ダメ出せるようになれば別にトントンでしょ?」 「あ、いや・・・」 「違う?」 「・・・差し引きでだけ見るならそうなる、かな」 「だけ、じゃないの。他にどんな見方がある? 400ならお釣りがきて、500出せればむしろUPしてるじゃない」 なにやら悲痛な表情で考え込むカイさん。 「しかし、防御面も・・・」 「死ぬようなとこは行かない。他には?」 「・・・」 「ほ、か、に、は!?」 「・・・ありません」 うわ、やばい。 これ気持ちいいかも。 あたし、キャラ変わりそう。 ていうか、カイさんの表情見てたら抱き締めたくなるよ? でもその前にちょっと、ちょっとだけ苛めたい、みたいな。 落ち着け、あたし。 自重しろ自分。 「%計算とか、修正次第で色々あるけどね、職によっては特に」 大人しく聞くカイさん。 「でもまぁ・・・いいんじゃない、適当で」 「え?」 「PT単位で考えてさ、だいたいで帳尻合えばいいじゃない。むしろ、帳尻合わせこじつけるのにPT単位で見て誤魔化したっていいのよ」 うん、きっと。 「とりあえず」あたしは言う。 「自分が自分が、とか。誰かが誰かが、とか。そういうのやめて、PT単位で誤魔化せないか考えてみよう?」 それが楽しいのコツ。 肩の力抜いて、ね。 なんだか半端に脱力した感じの仁王立ちのまま、何だか考え込んでいたカイさんが口を開いた。 しみじみと言う。 「・・・EEって、大きいんだな」 それを聞いて、思わずあたしは吹き出してしまう。 「やだ、そんなの初めて聞いた」 「そうか?」 「うん。EEっていうと、存在は大きいけど、やっぱり小さな守られてるみたいなイメージだもん」 「そうだな。うん、わたしもそんなイメージをもってた」 でも今は違う、と彼女は言う。 くすくすと笑うあたしに向かって、真顔で 「きみに誓おう。わたしもサラのように大きくなる」 「・・・」 もうダメ、無理、大笑いしちゃう。 そんなあたしを見ながら、「あ、バラエルになるから・・・サラよりは少し小さめで大きくなる、かな」などと言うカイさん。 どこまで本気なんだ、この人は。 やっばいなぁ。 あたしハマりそうだよ、この人に。 などと内心で苦笑しているあたしに向かって、彼女は真剣そのものの表情で言った。 「あ、でも精霊装備も着れるようになるから・・・」 「うん?」 「胸も大きくなるぞ、うん」 「・・・」 カイさん渾身のギャグだった。
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