** 御伽噺 **
《御伽噺》
ウィザードは、実につらい生き物です。 そのからだは容易くこわれてしまう。 ウィザードはなげきました。 「こんなぼくに、何ができるというのだろう」 ウィザードは泣きました。 「あぁ、ぼくはなんのために生まれたのだろう」 魔物をたおすまえに、このからだはこわれてしまうのです。 魔法をとなえるまえに、たおれてしまうのです。 ウィザードのなげきは、ノリアのすべての動物と植物が聞きました。 ウィザードのなみだは、ロレンシアの波のようになくなりませんでした。 ウィザードのかなしみは、デビアスの雪のように降りつもりました。 ある日、鶫(つぐみ)がさえずりました。 「エルフが来たよ、赤と緑の魔法をつかうエルフが」 雀(すずめ)もさえずりました。 「ナイトも来たよ、大きな剣と大きな鎧のナイトが」 エルフが言いました。 「わたしはあなたの鎧になりましょう」 ナイトは言いました。 「なら、おれはきみの盾になろう」 そしてエルフはこう言いました。 「けれど勘違いはしないでね。 わたしがあなたの鎧になるように」 ナイトが言いました。 「おれがきみの盾になるように」 「「あなた(きみ)はわたしたち(おれたち)の剣になるのよ(なるんだ)」」 この三つの職がそろったとき、光の加護が三人に。 それはまるて昼のようでした。 三人は旅をしました。 海を、砂漠を、空を。 そんなある日、ダークロードと魔剣士がやってきました。 ダークロードは言いました。 「我はしょくんの何になれよう? 光の加護もないというのに」 魔剣士は言いました。 「私はみんなの何になれるというのか? 光の加護もないというのに」 ウィザードは、ダークロードに言いました。 「あなたは光のささぬ闇の中で、 ぼくたちを導(みちび)くことができるでしょう」 ウィザードは魔剣士に言いました。 「あなたは光のささぬ闇の中で、 くらやみを切り裂くつるぎになれるでしょう」 そして五人は、いつでも旅をすることができるようになったのです。 光の昼も、闇の夜も。 今もどこかで、きっと旅を続けているに違いありません。 ※出だしの文句は、宮沢賢治『よだかの星』のオマージュですm(_ _)m テーマでなく、冒頭のみ拝借致しました。
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