日記っぽいもの

 『カミナさまとシンデレラ』




キミは元気? 裏フレッサは元気だよ♪
さぁ、ここは三人の座談会形式でお送りするミステリーコーナーです!


アクセル :
「なんで俺が・・・」


司会役は男性プレイヤーの心をわしづかみっ、
一方で女性プレイヤーからは黒いと噂されてる
“疑惑のフレッサ”がお送りしまーす!


アクセル :
「お前、その異名でいいのか・・・?」


タイタンじゃイーゴの手先NPCとまで言われてるんですよ?
へーき、へーき!
これもお仕事、割り切って参りましょう♪


カミナ :
「張り切ってみたいに言われても・・・このコ案外強いわね」


ささ! お二人も自己紹介を・・・


カミナ :
「あたしはカミナ。
12日間戦争で命を落とした三人の英雄“トライデント”の一人。
血液型はAB型で、年齢は死後8年」


アクセル :
「死後8年って年齢なのか!?」


カミナ :
「あぁ、そうそう。
一応、このアクセルの恋人らしいって言われてるけど、
その設定は気にしなくていいわ」


アクセル :
「Σ(゚Д゚;≡;゚д゚)」


あっ。
アクセルさま、今のリアクション可愛かったですよ♪


アクセル :
「・・・俺はアクセル。
さすがに自己紹介は必要なかろう」


有名ですもんね。
自分のでっかい像建てたり自己主張激しいし♪


アクセル :
「・・・お前、何気に無礼だな」


カミナ :
「アクセル、あなたそんなことしてたの?
いやねぇ、あたしが死んでから頭の悪さに磨きがかかったんじゃない?」


アクセル :
「なっ・・・何を言うか!
あれは、そう、男のロマンだ!!」


カミナ :
「“男のロマン”って、
くだらないことしたときに開き直る飾り文句のことよね?」


アクセル :
「ぐっ。
お、女もくだらん幻想に逃避する生き物だろうが!?」


うっわぁ、
それってすっごくアクセルさまらしい逆ギレですよ。


アクセル :
「逆ギレではない! 事実だ!!
たとえば・・・そう、『シンデレラ』という話があるだろう。
いつか王子様が現れて、か?
ふん、くだらん!!
そんな現実逃避するヒマがあれば自らを鍛えればよいのだ」


うわぁ、ますますアクセル一直線って感じに。

あ!
でもでも、『シンデレラ』といえば
ずぅっと気になってたことがあるんですよ。


カミナ :
「あら、何かしら?」


0時に逃げ出したシンデレラのガラスの靴が脱げちゃって、
それにぴったりの女性を探して・・・って部分。


カミナ :
「ああ、そんな展開だったな」


でも・・・


ぴったりの靴って、脱げちゃいますかね?



アクセル :
「そ、そういえば・・・」







というのが今回のお題だよ!


アクセル :
「ここまでが前フリか!?」


さぁ、キミたちも一緒に考えてね♪


アクセル :
「・・・帰っていいか?」


カミナ :
「いいわ、乗ってあげましょうよ」


アクセル :
「おい!?」


カミナ :
「あたしなりに答えはあるしね。
それにね、でなきゃ
わざわざ冥界から顔を出した甲斐がないわ」


ご、ご苦労さまデスm(_ _;)m


カミナ :
「あぁでも、こういうのはこの人に無理じゃないかしらね?
ゲストに呼ぶならアルケィナたちの方が良かったんじゃないかしら」


アクセル :
「ぬ?
カミナ・・・俺を甘く見るなよ」


カミナ :
「あら、アクセル・・・
あなたには絶対分からない問題だと思うわよ?」


アクセル :
「そこまで言いおったか、よかろう。
この問題、この俺が納得の正解というものを教えてやる!!」


あらら・・・カミナさまってば誘導上手いなぁ。
ていうか、アクセル様ってちょろi(rya


おし♪
キミたちも一緒に考えてね?







“ぴったりの靴が脱げた?”
さぁ、アクセルさま
分かりました?


アクセル :
「うむむ。
よし、事実から推測していこう」


ふむふむ?


アクセル :
「靴が脱げたのは事実だ。
だが本当にぴったりの靴が脱げるはずはない。
となるとだな・・・
ガラスの靴の本当の主はシンデレラではなかった、
ということになるな」


おぉーっと、大胆な推理です。


カミナ :
「それはどうかしら・・・ねぇアクセル、
なら本当の持ち主は誰だったのかしら?」


アクセル :
「そ、それはだな・・・義姉たちの誰かというのはどうだ?
意外で面白いじゃないか!」


カミナ :
「面白いって・・・アクセル、あなたねぇ?」


アクセル :
「いや、いっそ継母というのもいいな。
これはかなり意外な真相だぞ!」


アクセルさま、童話に意外性を求めてどうするんですか・・・。


アクセル :
「なぁに、童話など正解が用意されているわけでもあるまい。
しょせん誰にも証明など出来んのだ。
なら、これだって・・・」


カミナ :
「いいえ、アクセル。
それはどうかしらね」


アクセル :
「む?」


カミナ :
「正解である証明はできなくても、
間違ってる証明はできるんじゃないかしら?」


・・・というと?


カミナ :
「物語自体を思い出してごらんなさいな。
意地悪な継母と義姉たちからの仕打ち、
魔法使いとの会話、
それに
ぴったりのガラスの靴をはくシーンまで、
すべて“シンデレラは〜”という文章で明記されてたはずよ?」


アクセル :
「ぐ、確かにそれは・・・」


カミナ :
「つまり、
“本当の持ち主はシンデレラじゃない”
っていうのは無理があるわね。
大前提の語り手がウソをついてたことになるんだもの、
とてもフェアとは言えないわ



・・・つまり、
ガラスの靴の持ち主はシンデレラというのは動かしようがない?


カミナ :
「そういうこと。
意外性はあって面白いと思うけど、
問題文をいじって答えを書くようなものじゃないかしら?」





う〜ん・・・
でもこれじゃつまらないですよね。


カミナ :
「あら、そんなことないわよ?
“なぜ?”の部分は謎として残されてるじゃない」


ガラスの靴の持ち主はシンデレラ。
なのに何故、ぴったりの靴が脱げたのか?



カミナ :
「アクセル、あなたに分かる?」


アクセル :
「そ、それはだな・・・そうだ!
単純にコケて脱げてしまっただけだろう」


えー?
アクセルさま、そんな答えじゃ・・・。


アクセル :
「真実は往々にして平凡なものなのだ。
うむ、だいたい女というやつは運動神経が鈍いものだからな。
慌てて階段でつまづきでもしたのだろうさ」


そ、それだけ?
そんなぁ・・・。


カミナ :
「アクセル」


アクセル :
「ん?」


カミナ :
「あなたって、本当に馬鹿ねぇ」


アクセル :
「なっ・・・ならばカミナ!
お前には分かるというのか!?」


カミナ :
「“ガラスの靴を履いたシンデレラ”。
ガラスの靴を履かせて調べた兵士たちとのシーンから分かる、
“その靴のサイズはぴったりだった”。
この二点はいい?」


アクセル :
「うむ」


カミナ :
「いやね、アクセル。
なら、決まってるじゃないの・・・
“わざと”よ」


アクセル :
「わざとぉ!?
な、なんでわざとそんなことをする必要がある!?」


落としたのがわざとなら、
シンデレラは“謎の美女”が自分だと分かるように
“手がかりを残した”っていうことになります。


アクセル :
「そうだ。
だが、だとしたらおかしいだろう。
それなら・・・そもそも舞踏会にいれば良かったじゃないか」


そうですねぇ・・・
汚い本当の姿でも本人だと証明できるようにっていうなら、
そのまま残ってても魔法が解けても同じですもんね。


アクセル :
「むしろ、そっちの方が確実だろう。
靴のサイズがぴったりなんて証明法よりも」


カミナ :
「あぁ、かわいいアクセル・・・
考えてっ、考えるのよ!
舞踏会で魔法が解けて本当の姿になった場合と、
後日に家で本当の姿で分かった場合。
その違いは何?


アクセル :
「ち、違い?
場所以外にか?」


カミナ :
「そう、場所が違う。
その場にいる人たちも違ってくるわね?」


アクセル :
「うむ、当然だな。
舞踏会なら紳士淑女に囲まれているが、
家では確かめにきた兵士と家族くらいのものだろう」


カミナ :
「いいわ、アクセル・・・近づいてきた。
その家族って?」


アクセル :
「そりゃあ継母と義姉たちだろう?」


カミナ :
「どんな家族だったかしら」


アクセル :
「ん・・・シンデレラを苛めていた意地悪な継母と義姉、か?」


カミナ :
「そうっ、その通り!
当然、シンデレラは彼女たちが嫌いだった。
いえ、憎んでいた」


アクセル :
「い、いや、そんなことはどこにも書いて・・・」


カミナ :
「あのねぇ、アクセル。
毎日毎日、
毎日毎日毎日毎日毎日!
苛め続けてる相手から好かれるはずがないでしょう?」


アクセル :
「そ、それはそうだが・・・シンデレラは心の優しい娘で」


カミナ :
「あなた、そんな“心の優しい娘”が
本当にいると思ってるんじゃないでしょうね?」


アクセル :
「・・・」


カミナ :
「いい?
シンデレラはね、見返してやりたかったはず。
彼女たちに復讐したかったはずよ」


アクセル :
「し、しかしだな!
それなら・・・舞踏会で招待がバレでもいいじゃないか?
継母や義姉たちも会場にいたはずだ。
悔しがり、こそこそと惨めな気分で逃げ帰ったことだろうよ」


カミナ :
「あぁもう、アクセル・・・アクセル、アクセル!
あなたって本当に男の人ねぇ」


アクセル :
「・・・どういう意味だ」


カミナ :
「それは男の感じ方、考え方ってこと。
いい?
嫌いな犬がドブにはまったらね、
棒で沈めるのが女よ」


アクセル :
「・・・か、カミナさん?」


カミナ :
「舞踏会で招待がバレた場合、
継母や義姉はこそこそ逃げ帰っただろうって言ったわね?」


アクセル :
「あ、あぁ」


カミナ :
「そうね、たくさんの人だかりだもの。
きっと隠れて、人知れず、逃げ帰ったことでしょう。
でも、
それじゃシンデレラは満足できなかった


アクセル :
「・・・」


カミナ :
「逃がしなんてするものですか。
隠れる他人の背中も無い、
ショックを受ける彼女たちを面と向かって屈服させたかった。
隠れようもない場所で。
今まで苛め続けてきた現場が家だわ。
ここ以上に相応しい舞台がある?
そこでシンデレラは過去を塗り替えたのよ。
敗北と勝利を、
負け犬と勝ち犬を」


カミナ :
「殺人者は時として、
一瞬にして天啓を授かる瞬間がある・・・
聞いたことある?」


“比類なき神々しいような瞬間”。
唐突に肩に置かれた神の指。


カミナ :
「魔法が解ける0時の鐘が鳴り響いた時、
シンデレラは奇跡ともいえる閃きをみせた。
それはまさに天啓だったでしょう。
彼女はあざやかに最高の“復讐の演出”を用意したのよ。
わざとガラスの靴を脱ぎ捨てることで!」


カミナ :
「聞いたことあるかしら?
世界中を虜にした女がこう言った。
“一足の赤いハイヒールをちょうだい!
それだけで、あたしは世界をひざまづかせることができる。”
って。

『シンデレラ』は虐げられてきた者の復讐の物語。
みじめな未来しかなかった彼女の、
痛快なサクセス・ストーリー。
そこには無垢な恋愛も、
純朴な慈愛も、
王子様を待つだけの無力な女もいやしない。
シンデレラにとって、
ガラスの靴は“復讐の剣”だったのよ




でも、そう思うと
シンデレラって危ない賭けをしたんですねぇ。
王子様がガラスの靴の持ち主を探さない可能性もあったのに。


カミナ :
「でも彼女はその賭けに勝った。
それにね、
そこまで自信があったのかもしれないわよ?
短い宴の時間だけで、王子を心の虜にした自信が」


アクセル :
「シンデレラは薄汚れて灰だらけ、
自分が美しいことも知らなかったんじゃなかったか?」


カミナ :
「アクセル、あなたって本当にもう・・・
いい?
この世で、自分の顔を知らない女なんていない。
絶対に。
鏡で、水面で、誰かの瞳に映る姿で、
どんな環境でも自分の顔は知ってる。
それが女って生き物よ」


家中の鏡を外したくなるお年頃もありますけどね♪


カミナ :
「さらっとシビアなことを言ったわね、あなた」



アクセル :
「・・・かくして、
シンデレラは王子と幸せに暮らしましたとさ。
か」


カミナ :
「アクセル?」


アクセル :
「なんだ」


カミナ :
「あなたって、本当に救いようがないわねぇ!」


アクセル :
「・・・ど、どういう意味だ、それは」


カミナ :
「あのねぇ。
昨日の夜までろくに顔も知らなかった男と結婚するのよ?
分かってるのは
王子っていう肩書きと、財産くらいのもの。
そんなの、
ただの財産目当ての玉の輿や政略結婚と同じよ?」


アクセル :
「い、いやそれでも幸せな結婚生活がだな・・・」


カミナ :
「・・・」


アクセル :
「あ、哀れむような目で俺を見るな!!」


カミナ :
「ぴったりのガラスの靴を履いて連れられる、
王城までの行進。
王子と会うんですもの、
きっと着飾ったことでしょう。
昨日までは自分より恵まれてたはずの町娘たちが、
彼女を羨望の眼差しで眺めたはず」


それは快感だったでしょうねぇ。


カミナ :
「異性からのお世辞より、
同性からの羨望のため息の方が気持ち良いものね」


アクセル :
「そ、そういうものなのか?」


いいなー、カミナさま美人だから・・・。


カミナ :
「あら、若い子にそう言ってもらうのは嬉しいわ。
殿方からの褒め言葉は聞き飽きてるけど」


アクセル :
「・・・」


カミナ :
「いわば勝利の凱旋だわ。
それが彼女の幸せの絶頂期。
王城に着くまでの魔法の時間。
そこからの王子との結婚生活なんてオマケね」


アクセル :
「お、オマケ!?」


カミナ :
「物語も結婚生活についてなんて書いてないでしょう?」


アクセル :
「そ、そりゃあまぁ」


カミナ :
「作者はこう言ってるのよ。
“このときが彼女の幸せの絶頂期だった。
後の結婚生活など語るに値しない”

ってね」


カミナさまの結婚観って・・・(T_T)





カミナ :
「それにしても」


アクセル :
「ん?」


カミナ :
「あんなに強気だったのに、
肝心の推理は散々だったわねぇ」


アクセル :
「ぐ」


カミナ :
「何度も何度も間違って、ほんとにもう」


アクセル :
「うぐぐぐ」


カミナ :
「でもね」


アクセル :
「な、なんだ」


カミナ :
「あたしはそれであなたに失望したりしないわ、アクセル」


アクセル :
「・・・」


カミナ :
「あたし思ってたのよ。
アクセル、あなたは・・・

こんなものだろうな、って^−^


うわっ、
優しい笑顔でそれ言うエグさっ!!


カミナ:
「何か言った?」


イエナンデモアリマセンキノセイデス…


カミナ :
「じゃ!
そろそろ帰るわね、あの世に」


お、お疲れ様でした・・・。


カミナ :
「アクセル、ほどほどに元気でね。
あなたも死んだら、あの世で結婚しましょう?」


アクセル :
「・・・」


あらら。
アクセルさま、逃げるように帰っちゃった。
カミナさま、ちょっと苛めすぎだったんじゃありません?


カミナ :
「いいのよ、女の子に暴言吐いた罰なんだから」


え?


カミナ :
「言ったでしょ、
女を“くだらん幻想に逃避する生き物”って。

許せないと思わない?







↓好印象を持って下さったら、是非♪